研究課題/領域番号 |
16K11060
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
松吉 ひろ子 関西学院大学, 理工学部, 助教 (10448772)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膀胱炎 / モデル動物 / ラマン分光法 |
研究実績の概要 |
膀胱損傷モデル動物として、イソフルラン吸入麻酔下の150~250 g 雌Wistarラット尿道より挿入したPE-50カテーテルより0.4 mol/L HCl 0.2 mLを膀胱に注入、90秒後にこれを排出させ、1週間通常飼育する方法で急性膀胱炎モデルラットを作成、その方法を確立した。さらに、急性膀胱炎モデル作成方法と同様の手順での膀胱注入を1週間毎に4回行う慢性膀胱炎モデル(間質性膀胱炎モデル)ラットを作成、モデル作成法を確立した。両モデル間に差はないものの、両炎症モデルラットの膀胱重量が増加していることを示した。加えて、組織学的実験においても膀胱上皮が過形成を起こすことが分かり、両モデルが膀胱損傷モデルとして使用できる可能性があることを示した。 このモデル動物の膀胱、および、膀胱機能を調節する知覚神経の細胞体を含む後根神経節からラマンスペクトルを取得し、判別モデルを作成したところ、正常動物と炎症モデル動物間の違いをラマン分光分析で検出できることが判明した。以上より、ラマン分析法が染色法にかわる動物モデル確立確認法となる可能性があり、そのことにより、ラマン分光法が症候性の疾患である間質性膀胱炎の診断法となり、治療選択に貢献できる可能性を示した。 膀胱知覚神経の細胞体のあるL6、S1位後根神経節神経細胞と衛星細胞との相互作用に関与する可能性があるとKvチャネルのmRNA発現を可視化する目的で使用するRNAプローブ合成用のプラスミドを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膀胱知覚神経細胞の発火を担う電位依存性カリウムチャネル(Kv)の特性を明らかにするために、チャネルを構成する3つのサブユニットについて、正常膀胱知覚神経細胞では各サブユニットのどの異性体がどれだけ発現しているのか、また、その発現様式が排尿障害の原因となる膀胱炎や脊髄損傷により変化するのかを免疫組織学手法、in situ hybridization法を用いて明らかにする予定であったが、購入した抗体が免疫組織学の使用に耐えず計画通りには実験が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
膀胱知覚神経細胞の発火を担う電位依存性カリウムチャネル(Kv)を構成する3つのサブユニットについて、正常膀胱知覚神経細胞での発現とその発現様式が排尿障害の原因となる膀胱炎により変化するのかをin situ hybridization法、免疫組織学手法を用いて明らかにする。加えて、膀胱知覚神経細胞の細胞体周囲に存在する神経膠細胞である衛星細胞の電気特性を作り出すカリウムチャネルの発現様式を明らかにし、このチャネル発現様式が組織障害時にどのように変化するのかについても調べ、衛星細胞による知覚神経調節の機序を推測する。 衛星細胞が知覚神経細胞にどのように影響し、反対に、知覚神経細胞がどのような影響を衛星細胞に与えるのかを検出できるin vitro実験系の確立を目指す。確立した実験系を用いて衛星細胞と知覚神経との相互作用を明らかにし、チャネルの発現様式と関連づけ、さらに詳しい膀胱機能神経調節機構を構築する。研究が順調に進めば、ATP受容体、グルタミン酸輸送体、PTN受容体等神経膠細胞と神経細胞との相互作用に影響を与えると推測されるタンパク質の発現とその変化についても調べ、膀胱知覚神経での情報伝達経路についてより深い考察を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
膀胱炎モデル動物作成法成立後には、神経の活動電位形成チャネルである電位依存性カリウムチャネル(Kv)を構成する3つのサブユニットの膀胱支配神経での発現様式を、免疫組織化学的手法を用いて明らかすることを予定していたが、一部、抗原抗体反応による目的タンパクの検出が難しく、in situ hybridization法によるmRNAの検出に切り替えたため研究の進行に狂いが生じ、膀胱知覚神経細胞の細胞体周囲に存在する神経膠細胞である衛星細胞の電気特性を明らかにするための実験を行う余裕がなかった。加えて電気特性測定の予備実験については当該研究者の所属施設の他研究室備品(マニピュレーター、ピペットプラー)の使用が許可されたため機器購入を急ぐ必要がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度購入予定であったマイクロフォージ、マイクロマニピュレータ-と今年度購入予定であったPowerLab 8/35の購入を検討している。
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