研究課題/領域番号 |
16K11061
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
志牟田 健 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (40370960)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 淋菌感染症 / 性感染症 |
研究実績の概要 |
我々の2010-2012年に日本国内で分離された淋菌193株のMLSTによる解析では、MLST1901、7363、7819、7359の4系統に属する株で全体の86%を占る。現在、淋菌感染症治療薬で問題となっている第三世代セファロスポリン剤に対する非感受性株の多くは、MLST型1901、7363、7819の3つの系統に属する株であった。一方、MLST7359系統に属する株は、ほとんどの治療薬剤に対して感受性を示した。これまでの淋菌感染症の主な研究では特定の実験室株のみで研究が行われており、個別の菌株間における比較検討解析は行われていない。淋菌と一括りに議論されているが、全ての淋菌株が宿主に対して同様の反応性を示すのか現在のところその答えは示されていない。本研究では、宿主細胞におけるMLST1901、7363、7819の3系統と7359系統の株反応性の違いを明らかにすること共に、これら系統の異なる株の諸性質の差異の解明に努める。はじめに、淋菌株の系統による増殖様式に差異があるのか検討した。淋菌は、通常の一般細菌で使用される液体培地では生育困難であることより、淋菌の液体培養に適した培地の検討を行った。上記4系統の菌株を、LB、TSB、BHI、Nutrient Broth、GW培地における液体培養実験 (48時間)を行った。その結果、GW培地を用いた時のみ、4系統とも同等の増殖曲線 (CFU/OD600)を示した。一方、BHI培地使用時はMLST1901、7363、7819の3系統と比較して7359のみが緩やかな増殖曲線 (CFU/OD600)を示すことがわかった。LB、TSB、Nutrient Broth培地使用時は系統間ではなく菌株間による増殖の差異が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
淋菌の液体培養は困難であり、一般細菌で使用される通常の液体培地等の条件下では十分に増殖することが出来ない。初年度では、淋菌の液体培養における条件検討を行い、GW培地使用時において、淋菌株MLST1901、7363、7819、7359の4系統の株で、十分に増殖 (CFU/OD600)出来ることが分かった。菌株間の諸性質を比較検討する際には、菌株間で大きな差異のない菌液 (CFU/ml)の調整が必要であり、今後の実験ではGW培地を用いることで、それを可能とする。
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今後の研究の推進方策 |
MLSTで分類された淋菌株MLST1901、7363、7819、7359の4系統に属する株それぞれ3株、合計12株について以下のA-Cの項目について解析を行う。以下の実験の液体培養時には、GW液体培地を用いる。
A.培養細胞 (HeLa細胞)を用いた淋菌の接着性及び定着性についての検討を行う。 B.菌株間のLOS (lipooligosaccharide)の発現についての検討を行う。 C.淋菌株のプロゲステロン、エストロゲン (女性ホルモン)刺激の有無による上記A、Bの追試を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり。
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