研究課題/領域番号 |
16K11063
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
三輪 祐子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (90572941)
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研究分担者 |
岩崎 研太 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10508881)
小林 孝彰 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70314010)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ABO血液型不適合 / 脱感作療法 / 急性抗体関連型拒絶反応 |
研究実績の概要 |
ABO 血液型不適合腎移植は、DSA (ドナー特異的HLA 抗体) 陽性腎移植に比較して予後が良い。早期の急性抗体関連型拒絶反応 (Acute AMR) の頻度は低く、また抗A/B 抗体が長期接着しても、慢性抗体拒絶反応 (Chronic AMR)は起きにくい。腎グラフトを保護するaccommodation (免疫順応) の状況を引き出し、正に働く傾向がある。抗A/B抗体の接着はDSA 抗体によるChronic AMR を抑制できる (ベネフィットな) 可能性もある。本研究は、【1】抗A/B 抗体接着後早期で起こるAcute AMR の負に働くリスク因子を明確にした後、【2】抗A/B 抗体接着後、長期で起こるChronic AMR を抑制している正に働くベネフィット因子を探索し、それらの知見を元に【3】Chronic AMR 防止のための抗体治療の開発を目指した、将来の臨床応用を視野に入れた研究である。今年度は、前年度同定した【1】抗A/B 抗体接着後早期で起こるAcute AMR の負に働くリスク因子を用い、移植後の過剰免疫による感染症を防ぐために導入した、 B細胞除去を目的としたリツキシマブ (RIT) 投与回避プロトコールの適応基準を設定した。また【2】において、RITを投与した群と、RIT非投与群 (free群) において移植前後のレシピエントのABO抗体の推移(1,3,5,7,10年)をRBC-FCM法にてその抗体価を測定したが、ABO ドナー特異的抗体の上昇は、RIT投与群、RIT free群においても見られなかった。これらの結果に対して、2018年度に行われた第51回日本臨床腎移植学会にて口演発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、【2】抗A/B 抗体接着後、長期で起こるChronic AMR を抑制している正に働くベネフィット因子を探索のため、レシピエント移植前後の血清を用い、①Chronic AMRにおいて廃絶した群と、長期生着群のレシピエント患者の移植前後の抗A/B 抗体価を比較した。廃絶群においても移植前の抗A/B抗体価に比較して上昇は見られなかった。次に②抗A/B 抗体の残存量が長期生着のベネフィット因子になるかを確認するため、各種の脱感作療法群のレシピエント移植前後の抗A/B 抗体価の推移を測定し、グラフトへの吸着、もしくは脱感作療法によって抗ドナー血液型抗体(donor specific antibody)が低下しているのかを確認するために、レシピエントがO 型において、ドナーと異なる抗体(non-donor-specific antibody)の抗体価も調べた。その結果SPX群、RIT群、SPX(-), RIT(-)群とも、donor specific IgG抗体価の10年までの推移は、Non-donor specific IgG抗体価推移に比較して、3年経過しても低値が継続していた。RIT処置のB cell抑制効果は3年ほどであるが、5年10年経て急激な上昇はみられなかった。最後に③抗A/B抗体の接着が腎グラフトに直接どのような正の影響を与えているかについてを調べるため、腎バイオプシーサンプルを用いたOMICS 解析(mRNA, miRNA microarray 解析)は、a)1年腎生検(ABO 適合)、b)1年腎生検(ABO 不適合)、c) Episode 腎生検(AMR)の抗A/B 抗体接着によるaccommodation の現象を突きとめる検討したが、組織のマイクロアレイにおいては明確なaccommodationの原因分子の特定は出来なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
i)引き続き、B細胞培養の技術を用いて、今年度ABO血液型不適合腎移植後抗A/B抗体価の上昇が見られないのは、組織への吸着かもしくは、抗A/B抗体産生が抑制されているのか確認するために、腎移植患者検体を用い、移植前後のB細胞培養における抗体価を測定し、比較する。またii)抗A/B抗体の接着が腎グラフトに直接どのような正の影響を与えているかについてを調べるため、腎バイオプシーサンプルを用いたOMICS 解析(mRNA, miRNA microarray 解析)は、a)1年腎生検(ABO 適合)、b)1年腎生検(ABO 不適合)、c) Episode 腎生検(AMR)の抗A/B 抗体接着によるaccommodation の現象を突きとめる検討をしたが、組織のマイクロアレイにおいては明確なaccommodationの原因分子の特定は出来なかったため、ABO抗原を発現する血管内皮細胞(EAhy/A,B)細胞に、抗A/B抗体を接着させた系において、MEK/ERK系を不活性化させ、それに伴う補体制御因子(CD55/CD59)の誘導状態における、新たな分子の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)腎バイオプシーサンプルを用いたOMICS 解析(mRNA, miRNA microarray 解析)は、別の課題でも1年腎生検(ABO 適合)、b)1年腎生検(ABO 不適合)、c) Episode 腎生検(AMR)の解析が重なるところがあってその解析データーを利用することができた。(使用計画)腎バイオプシーサンプルにおけるmRNA microarray 解析では特定できなかった分子を、培養細胞の系におけるmRNA microarray解析を行い、accommodation(免疫順応)に関わる分子の特定を行うためその解析費用に使用する。又その特定された分子は、腎バイオプシーサンプルにおいての発現を確認するために組織染色を行うためその実験費用に使用する。
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