研究実績の概要 |
【目的】ABO血液型不適合腎移植(ABO iKT)は良好な成績が得られることが明らかになったが、血清中の抗A/B抗体価が低値であるにも関わらず激烈な急性抗体関連型拒絶反応(Acute AMR)を来す症例がある。血清中の抗体価だけでなく抗体産生細胞(B細胞)に着目することで移植前のリスク因子を検索する。【方法】健常人の血液型既知のヒト末梢血単核細胞(PBMC)及びPBMCから分離したB細胞を用いた。i)は、B細胞に基本培地にサイトカイン(IL-2,10,21,15)CD40 ligand, TLR(toll like receptor)7,8のligandであるR848を入れて、ポリクローナルに抗A,B抗体を産生させる系ii)は血液型A,B抗原を強制発現させたヒト臍帯静脈内皮細胞(EAhy/A,B)にPBMCをco-cultureさせ、A,B抗原で刺激をしたモノクローナルに抗A,B抗体を産生させる系を作成し、4days,7daysの上清を回収し、A,B抗原をコーティングしたELISA法で抗A,B抗体価IgG,IgMを測定した。 【結果】i)では、7daysに最大に血液型に従って抗A,B抗体が産生された。IgM以外に IgG抗体の産生も見られた。個人間での再現性は、新鮮血液を用いた場合みられたが、保存PBMCから分離したB細胞では抗体産生にばらつきがみられた。ii)においては、IgM,IgGの抗A,B抗体の産生はみられなかった。 【結論・考察】今回抗体産生の刺激において、ポリクローナルな自然抗体を産生させる系と、A,B抗原を刺激とするモノクローナルな抗体産生刺激の系を比較したが、抗体の産生を高めるのはポリクローナルな系であった。しかし実際のABO血液型不適合移植において、グラフトに発現するA,B抗原が引き金になって起こるAcute AMRを予測するためには、ヒト末梢血中に内在する抗A,B抗体産生細胞、及び前駆体細胞を追跡する必要がある。そのために解析方法を、抗体産生に加え、ELISPOT法A,B抗原の刺激を受けたB細胞の増殖刺激マーカーの探索が必要となると思われる。
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