研究課題/領域番号 |
16K11067
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
守時 良演 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (50595395)
|
研究分担者 |
安井 孝周 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40326153)
林 祐太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40238134)
水野 健太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (70448710)
西尾 英紀 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (10621063)
中根 明宏 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (70464568)
神沢 英幸 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00551277)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 停留精巣 / 精子幹細胞 |
研究実績の概要 |
[停留精巣モデルマウスの開発]これまでマウスでは先天的な停留精巣モデルマウスは存在していなかった。私たちはこれまで、ラットでは抗アンドロゲン剤を妊娠中に投与すると停留精巣の胎子が得られるが、マウスでは尿道下裂しか得られないことを報告してきた。そこでヒト停留精巣でRNA-sequenceを行う前の、preliminaryとしてマウスの停留精巣モデルを作成した。これは下記のごとく外科的な手法で可能になった。[微量なmRNAの増幅]1細胞mRNAからcDNAを合成し増幅することを主に行ってきた。発現量が多いmRNAについては安定的に増幅可能であったが、1細胞あたり100copy未満のmRNAについては増幅効率の再現性が十分とは言えなかった(下記に報告する)。[発表実績]現在作成している停留精巣モデルマウスと並行して、マウス停留精巣の解析を行い、第26回泌尿器科分子・細胞研究会(2017.3.10-11、大分市)と第26回日本小児泌尿器科学会総会・学術集会(2017.7.5-7、名古屋市)で発表した。前者はmicroRNAの一種であるmiR-135aとその標的であるFOXO1発現の報告であり、後者は精子幹細胞の新規マーカーとして、FOXO1とphospho-CREBの発現解析をマウス精巣で行ったものである。後者はベストポスター賞を受賞した。また精子幹細胞の前駆細胞である始原生殖細胞の腫瘍として、臨床で経験したヒト精巣未熟奇形腫の解析を行い、第274回日本泌尿器科学会東海地方会(2017.3.19、名古屋市)と第26回日本小児泌尿器科学会総会・学術集会(2017.7.5-7、名古屋市)で発表した。前者は優秀演題賞を受賞した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
[停留精巣モデルマウスの開発]これまで当教室では、フルタミドを用いた先天的な停留精巣モデルラットを作成し、研究を重ねてきた。これは外科的な操作を加えていないため、安定的に停留精巣を作成できる利点があった。しかし精巣機能や遺伝子発現については、より知見が蓄積されているマウスでの解析に備えて、新たに停留精巣モデルマウスの開発を行った。現状では妊娠マウスにフルタミドを投与しても、尿道下裂こそできるが停留精巣は作成困難であった。そこで外科的な手法を用いて、思春期前に相当する生後3週のマウスで停留精巣作成を行った。コントロールとして行ったラットでの外科的停留精巣では、思春期後の精巣の上昇と精巣の萎縮が観察された。しかし体格の小さなマウスでは手技が安定せず体表からの外科的操作だけではロバストなモデルの作成には至らなかった。最終的には皮膚切開を行い、鼠径管を直視下に結紮し埋没縫合を行うことで安定的なモデルマウスの作成に至った。[微量なmRNAの増幅]1細胞に相当する10pg当量のGC-1細胞(typeB spermatogonia) mRNAからのcDNA増幅合成を、2つの方法(SC3-seq vs Quartz-seq)で行い、増幅効率をqPCRで比較した。SC3-seqでは、40コピー/細胞相当のmRNAまで、また75%の再現性で増幅可能であった。しかしQuartz-seqでは100コピー相当のmRNAでも増幅の再現性にばらつきがあり、今後細かな手技の見直しを行う予定である。主な遅れの主因は再現性の担保が得られなかったことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
[停留精巣モデルマウスの開発]ヒト停留精巣での解析を行う前に、まずはマウスで遺伝子発現解析を行い、種間の精子幹細胞nicheの違いを解析したい。停留精巣モデルマウスは安定的に作製できるようになったため、今後は組織所見がヒト停留精巣と一致するかどうかを、精子幹細胞マーカーの免疫染色などで判断する予定である。[微量なmRNAの増幅]Quartz-seqの手技の見直しを行い、SC3-seqかQuartz-seqのどちらを行うかを判断する。SequencingおよびMappingなどのデータ解析を行う際にはprimer dimerの量などから後者が有利とされている。そのため、同等の増幅効率であれば後者で行う予定である。またcDNAの増幅が確立されれば、(現在は金銭的な観点からGC-1細胞を用いた解析を行っているが、)最終的な方法の判断は過去の報告が蓄積しているマウスES細胞を用いて行う予定である。[マウス精巣における1細胞RNA-sequence]まずは精巣のdissociationの方法を確立する必要がある。現在研究分担者で、精巣のdissociationに取り組んでおり、コラゲナーゼに加えてラミニンとマトリゲルを用いる方法で検討を行っている。その後実際にマウス精巣でのnicheの遺伝子発現解析を行い、in vivoにおけるsequencingの有用性をもって、どちらの方法が適しているかを判断する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間2年が経過し、研究結果が出始めたので追試をするところであったが、時期的に間に合わなくなってしまい次年度使用額が生じた。 H30年度ではまずマウスで遺伝子解析を行い、種間の精子幹細胞nicheの違いを解析したい。
|