研究課題
我々はLipo-alpha-Galactosylceramide(Lipo-aGC)とanti-CD154 monoclonal antibody (MR-1)を利用した方法でマウス同種異系キメラ誘導を経た心臓移植の免疫誘導に成功した。今回の研究ではこの免疫誘導protocolにおいてtacrolimus(TAC)及びeverolimus(EVL)を併用し、この免疫誘導に与える影響を検討した。TACおよびEVLの最適な投与量を検討するために、ドナーB6マウスの心臓をホストBALB/cマウスへ移植を行い、術後当日にlipo-aGCとMR-1を投与し、同日から14日までにそれぞれの薬剤投与を行った。TAC 1.0 mg/kg/dayを投与した群、移植心臓は10日程度で拒絶され、免疫抑制剤を投与しない場合と比べて生着率の延長は認めなかった。TAC 5.0 mg/kg/dayを投与した場合、移植心臓は14日間生着した。EVL 1.0 mg/kg/dayを投与したところ移植心臓は14日間生着した。本研究ではTAC 5mg/kg/day、EVL 1.0 mg/kg/dayを使用することとした。次にTACおよびEVLが前述のマウス同種異系キメラ誘導に及ぼす影響を検討した。ホストBALB/cマウスに骨髄細胞を静注投与しlipo-aGCとMR-1を投与しキメラ誘導を行い末梢血のドナー由来細胞数を比較した。TAC 5mg/kg/day投与群では28日目以降でドナー細胞が減少した。一方、EVL 1.0 mg/kg/day投与群では、28日目以降においても末梢血におけるドナー細胞は維持された。このように、Lipo-aGCとMR-1を利用したマウス同種異系キメラ誘導においては、EVLの併用ではキメラ誘導に効果的であったが、TACを併用するとキメラ誘導は阻害された。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、研究に使用するtacrolimus及びeverolimusの投与量の検討、それぞれの薬剤を併用した場合のマウス同種異系キメラ誘導に与える効果の検討、及びその背景である制御性T細胞の評価まで行えたため、設定した目標まで研究は進展したと判断される。
前述のモデルにおけるマウス同種異系キメラ誘導に対して、Tacrolimusは阻害的に、everolimusは補助的に作用することが示された。また、それらには制御性T細胞が関与している可能性が示唆された。今後は、tacrolimusおよびeverolimusの併用においてサイトカインやケモカインの発現がどのように変化するかを検討する。
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