研究実績の概要 |
男性不妊症患者である非閉塞性無精子症や、閉塞性無精子症患者の精巣組織の採取をmicro TESEやTESEを行なう際におこなってきた。採取した精巣組織をバラバラにしたあとでシャーレにまき、線維芽細胞を樹立した。ヒトOct4,Sox2,Klf4,c-Mycが搭載されたセンダイウイルスを作用させ、ヒトiPS細胞の誘導に取り組んだ。また、同時進行として、ヒトの代替え種であるマイクロミニピッグの皮膚細胞から線維芽細胞を樹立し、ヒトOct4,Sox2,Klf4,c-Mycが搭載されたセンダイウイルスを作用させiPS細胞の誘導に取り組んだ。形態学的に扁平状のES細胞様のコロニーが完成し、ヒトES細胞と同様の条件下において、培養および増殖を確認した。このコロニーの性質を調べるために、免疫染色をおこない、Alkaline phosphatase, NANOG, OCT4, SSEA4の発現を確認した。また、浮遊培養条件下で、EB(胚様体)の形成を確認した。さらに、in vitroにおいて、α-smooth muscle actin, α-fetoprotein, β-III-tubulinの発現を確認し、三胚葉の分化を確認した。しかし、in vivoの実験において、SCIDマウスの精巣に投与したコロニーより、奇形種の形成は見られなかった。結論として、マイクロミニピッグより、ヒトOct4,Sox2,Klf4,c-Mycが搭載されたセンダイウイルスを用いて、in vitroとin vivoで多能性を持つ完全なiPS細胞を誘導することはできなかった。おそらく、マイクロミニピッグ由来iPS細胞の樹立および増殖には、未知のシグナル伝達や、添加物が自己増殖や多能性に関与することが示唆された。(Yamabe F and Kobayashi H Jorunal of Veterinary Science & Animal Husbandry 2017)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
H28年度では、マイクロミニピッグの実験においては予定通りに進み、マイクロミニピッグの皮膚から繊維芽細胞を樹立し、ヒトOct4,Sox2,Klf4,c-Mycが搭載されたセンダイウイルスを作用させ、マイクロミニピッグ由来iPS細胞を樹立することできた。しかし、樹立したマイクロミニピッグ由来iPS細胞の性質を調べた所、in vivoでは奇形腫の形成が見られなかったことより、不完全なiPS細胞であることが分かった。原因として、iPS細胞の誘導に用いた遺伝子が、ヒト由来のものであったのが一因であったと考えられる。ヒトとブタでは染色体数も異なり、種が異なるためヒト遺伝子ではブタ遺伝子の代替えはできないことが分かった(Yamabe F and Kobayashi H Jorunal of Veterinary Science & Animal Husbandry 2017)。男性不妊症患者の原因についての解明については、非閉塞性無精子症や、閉塞性無精子症患者からmicro TESEやTESEで採取してきた精巣組織を、不慮のアクシデントが原因による-80℃冷凍庫の故障により、すべての検体を失ってしまった。これまで、40検体以上を収集しており、今後の精子形成に関与する遺伝子スクリーニングの実験を予定していたが、近日での実験の実現は困難となってしまった。今年度は、非閉塞性無精子症や、閉塞性無精子症患者の精巣組織を集める作業から始めることになり、今年度における男性不妊症患者からのiPS細胞の誘導実験は難しいと考える。今年は、組織採取を目標にかかげ、来年度に実験を展開していきたい。この点は全く予想されていないことであり、本研究課題は遅れていると判断せざる得ない。
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