研究実績の概要 |
男性不妊症は、約80%が造精機能障害であり、原因が不明である。特に、無精子症は精液中に精子が1匹もみられず、挙児を希望するカップルでは問題となる。無精子症の中でも非閉塞性無精子症は、精巣内で精子を全く作っていないか、もしくはごくわずかしか形成されていない重篤な病態である。 無精子症を呈する非閉塞性無精子症や閉塞性無精子症の精巣組織をmicro TESEやsimple TESEにて採取した。その後、線維芽細胞を樹立し、センダイウイルスを用いて、ヒトOct4, Klf4, Sox2, c-Mycを導入し、iPS細胞を誘導してきた。これまでに、47,XXYにて無精子症であるKlinefelter症候群由来iPS細胞の樹立に成功している。(Shimizu T, Kobayashi H. 2016)また、ヒトの代替え種であるマイクロミニブタを用いたiPS細胞の誘導を試みたが、完全なiPS細胞を樹立することができなかった。(Yamabe F, Kobayashi H. 2017) 更なる検討として、男性不妊症患者から誘導したiPS細胞を用いて、網羅的な遺伝子解析を行なうことを予定していた。しかし、解析に必要な十分なiPS細胞を誘導することができず、研究の進行具合いに関しては、目標通りには進んでいない。進行が遅れた原因としては、2016年12月末に起こった-80℃冷凍庫の故障による保存検体の消失が影響している。保存していた線維芽細胞を失い、容易にiPS細胞の誘導が行なうことができなくなった。2018年にこれまでの-80℃冷凍庫、-20℃冷凍庫、4℃冷蔵庫を一新し、現在、検体の採集を行なっている所である。
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