研究課題
現在日本の最も深刻な社会問題の一つとして間違いなく少子化問題が存在する。しかしながら、その背景として近年日本では、不妊症及び不育症患者が増加傾向にあることは一般的にはあまり認識されていない。本研究では、不妊症の約半数を占める重要な原因因子である男性不妊症の原因遺伝子群及び病態を解明し、また同時に現在原因不明とされている不育症の原因を遺伝学的に解明することにより生殖医学分野のレベルアップに貢献することを本研究の目的として研究が行われた。近年、ヒト及びマウスH3T遺伝子が同定された。2017年H3t遺伝子のノックアウトマウスが報告され、オス、メスともに発達上正常である。しかしながら、オスのhomo-mutantは不妊を呈し、解析の結果組織学的にその精巣には胚細胞が全く存在しておらず無精子症を呈していた。この表現型はひとでいうSertoli cell-only syndrome (SCOS) に一致する。そこで今回我々はヒトH3T遺伝子がヒトSCOSの原因遺伝子かどうかを解析した。対象は組織学的にSCOSと診断された日本人無精子症患者178名及び正常コントロール110名である。全て文章によるインフォームドコンセントを得た後に血液を採取し、Genomic DNAを抽出しH3T遺伝子の全てのcoding regionをダイレクトシークエンスしmutation解析を施行した。mutation解析の結果、SCOS患者において計7つのSNPを検出した。そのSNPの出現頻度をSCOS患者群及び正常コントロール群で統計学的に比較検討したところ、SNP7においてゲノタイプ、アレルの頻度ともに両者の出現頻度に統計学的な有意差を認めた (P = 0.0465 及び0.0478)本研究によりヒト無精子症の一つであるSCOSの発症にヒトH3T遺伝子が何らかの関与をしていることが示唆された。
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