研究課題/領域番号 |
16K11078
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
福井 淳史 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00321969)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | NK細胞 / 不妊症 / 着床不全 / 不育症 / NKp46 / サイトカイン / 精液 |
研究実績の概要 |
NK細胞表面に発現する活性性受容体であるNKp46と同様にNK細胞に発現するその他の活性性あるいは抑制性レセプターの共発現を測定し、その生理学的意義、不妊症(着床不全)・不育症への関与を解明すること、子宮内膜および末梢血における免疫担当細胞が妊娠の成立および維持に関する役割を明らかにすることを目的として、検討を行った。 本学の倫理審査委員会の承認と患者への説明と同意のもと、子宮内膜組織を不育症患者より採取、子宮内膜NK細胞表面抗原(CD16(活性性)、CD56、NKp46(活性性)、CD158a(抑制性)、NKG2A(抑制性)、NKG2C(活性性)、NKG2D(活性性))発現およびサイトカイン産生(IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-10)をフローサイトメトリーにて測定した。 NK細胞のうち、サイトカイン産生NK細胞であるCD56bright細胞では、細胞傷害性NK細胞であるCD56dim細胞に比して、有意にNKp46とNK細胞の抑制性受容体であるNKG2A、CD158aの共発現が高値であった。これは、活性性受容体であるNKp46はNK細胞の細胞傷害機能と抑制性受容体を多く発現する機能(サイトカイン産生能)双方に関与している事を示しているものと思われる。さらに子宮内膜NK細胞の分布をみると、細胞傷害NK細胞であるCD16+/CD56dim細胞が多くなると、NKp46とNK細胞活性性受容体であるNKG2Cとを共発現する細胞が高値となった。すなわち細胞傷害性の増加は各活性性受容体の共発現の増加からも示されていることが明らかとなった。 また免疫担当細胞の生理的サイトカイン産生測定法の開発を目的に細胞刺激物質として精液を使用し、生理的かつカップル特異的な免疫担当細胞サイトカインを測定し、精液により子宮内膜NK細胞が刺激され、サイトカイン産生が認められる事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
末梢血、子宮内膜を用いたNK細胞における活性性および抑制性受容体共発現測定およびサイトカイン産生は行い得た。また精液による子宮内膜刺激によるカップル特異的なタイプ1/タイプ2サイトカインバランスも行い得た。各種受容体による細胞分離後のサイトカイン産生が現在進行中である。翌年度以降も継続して測定していく内容であるので、翌年予定のものに加え継続して検討を行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在行っているNK細胞における活性性受容体および抑制性受容体の共発現およびサイトカイン産生についての測定を継続するとともに、NK細胞をさらに各種受容体発現により細分化し、それらの機能発現を明らかにしていきたい。さらに今年度以降予定しているNK細胞の機能を制御すると考えられるNK22細胞、NK17細胞を測定可能としていきたい。これらの検討により不育症・不妊症の病態の一端がさらに解明されると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を消耗品購入、人件費、その他に充てた。試薬の購入を行わなくとも所有のもので研究可能であったため、次年度使用が生じた。また次年度は予定通り、消耗品、旅費、その他、また要すれば人件費に研究費を充てる予定である。
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