研究課題/領域番号 |
16K11082
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中島 彰俊 富山大学, 附属病院, 講師 (00436792)
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研究分担者 |
島 友子 富山大学, 医学部附属病院, その他 (00377285)
齋藤 滋 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (30175351)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / オートファジー / 胎盤成長因子 / トランスサイレチン |
研究実績の概要 |
申請者は、世界に先駆けて、妊娠高血圧患者血清中に増加する可溶型エンドグリンが胎盤のオートファジーを抑制することで、胎盤形成を阻害し、妊娠高血圧症候群を発症することを報告してきた。今回の検討により、胎盤のオートファジー不全が異常タンパクを蓄積させ、胎盤の絨毛細胞機能不全を誘導することがわかってきた。具体的には、まず初めに、胎盤のオートファジー不全が胎盤の低形成につながることを、胎盤特異的オートファジー抑制マウスモデルを用いて確認した。胎盤絨毛細胞の機能を次に評価し、浸潤能および血管置換能が低下しているために胎盤低形成になることが分かった。また、オートファジー不全は胎盤におけるアポトーシスを増加させていること、そのひとつの分子メカニズムとして胎盤成長因子の低下を引き起こすことも明らかとなった。そらにこのモデルを用いて、マウスにおいてもオートファジー不全は異常タンパク蓄積が起こることを明らかとした。次に、ヒト妊娠高血圧症候群胎盤における異常タンパクには、どのようなタンパクが含まるかを検索した。その候補として、共同研究者らが発見した“妊娠高血圧症候群患者血清中には凝集したトランスサイレチンが増加する”という報告に注目した。その結果、我々の開発したオートファジー機能欠損絨毛細胞において、トランスサイレチンはオートファジーの分解基質であり、オートファゴソーム内に取り込まれることが分かった。また、オートファゴソームの機能低下によって細胞内にトランスサイレチンが蓄積しやすくなることが判明した。今後は、トランスサイレチンがアルツハイマー病にみられるアミロイド沈着の原因物質の一つであることに注目し、アルツハイマー病治療薬が胎盤内異常タンパク質蓄積の予防薬となるかを検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原因解明という意味では順調に進んでいるが、その後の薬剤開発というところに繋げる点では遅れている。しかしながら、メカニズムを明らかにしないと薬剤開発は困難なため、現在の計画を進めることが、最終的ゴールへの近道であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り進めるが、それを加速するためいくつかの共同研究者に協力をお願いし、ヒトPrimary trophoblastを使用することで、より生体内に近い状況を再現し、薬剤開発につなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部購入予定であった抗体が、在庫不足のため、搬入が来年度になったため。
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