研究課題/領域番号 |
16K11092
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
杉山 隆 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10263005)
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研究分担者 |
藤岡 徹 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (10253303)
松原 圭一 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (80263937)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DOHaD / マウス / 子宮内過栄養 / PUFA / 炎症 / 抗炎症 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
我々は、過去に作成した中等度高脂肪食マウスモデルにおいて、子宮内過栄養にさらされた仔マウスが将来、インスリン抵抗性増大を伴う耐糖能障害を来すことを明らかにした。今回は、n-3 多価不飽和脂肪酸(PUFA)/ n-6 PUFA比が高い遺伝子改変マウス(Tg群)を用いて妊娠させ、母獣および仔の表現型を野生型と比較検討した。 1. 遺伝子改変マウスを用いた検討: 対照群として6週齢のC57BL/6 マウスを10週齢時に交配した。一方、n-3 PUFA/n-6 PUFA比が全身性に高いTg群を同様に10週齢に交配した。妊娠15日目、16日目にそれぞれ腹腔内へのブドウ糖負荷試験とインスリン負荷試験を施行した。その結果、TG群がWT群に比し、耐糖能がよい傾向を呈し、インスリン抵抗性に関しては有意に低いことが判明した。また、Tg群において傍子宮脂肪組織における炎症性サイトカインであるTNF-alphaやIL-6の発現が低く、マクロファージではM1/M2比が高い傾向が認められた。また興味深いことに、Tg群における仔発育がWT群のそれに比し小さい傾向が認められた。 2.高脂肪食負荷によるモデルマウスにおける検討は、現在進行中であり、次年度に続けて行う予定である。 以上の結果より、n-3 PUFAを高発現するマウスでは、抗炎症を介するインスリン抵抗性が軽減することが示唆された。すなわち、妊娠中の生理的なインスリン抵抗性の軽減を介し、仔の体重が軽くなったことが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の大学院生が卒業し、現在、研究を行う人材が乏しく、研究協力者および実験助手により研究を必死に継続している状態である。研究協力者もそれぞれ研究を遂行中であり、何とか予定通り進めている状況にある。平成30年度には新しい大学院生が入るので、実験をやり遂げるつもりある。
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今後の研究の推進方策 |
我々がこれまでに作成した中等度高脂肪食マウスモデルにおいて、子宮内過栄養にさらされた仔マウスが将来、インスリン抵抗性増大を伴う耐糖能障害を来すことを明らかにした。 今回、n-3 PUFA/ n-6 PUFA比が高い母獣では、野生型に比し、妊娠後半期に生じるインスリン抵抗性が軽減し、その結果、仔発育が小さくなることが示唆された。この現象は、言い換えれば、妊娠中に生じる生理的なインスリン抵抗性が仔発育にとって合目的的であることを示唆するものである。 今後、母獣への高脂肪食負荷により子宮内過栄養状態の妊娠モデルマウスを作成し、抗炎症に作用するn-3 PUFA/ n-6 PUFA過剰発現マウスの影響等を検討する予定である。この検討により、子宮内過栄養が仔に炎症性反応を引き起こすエピジェネティクスをキャンセルできるか否かを明らかにすることができる可能性があり、極めて興味深いと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
中等度高脂肪食摂餌マウスの実験系の一部が次年度に施行されることとなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、予定通り実験を遂行する予定である。
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