研究課題
これまで我々は、妊娠モデルマウスを用いて妊娠時の生理的インスリン抵抗性発生に脂肪組織における炎症様変化が関与する可能性を示した。また高脂肪食摂餌の肥満モデルマウスを用いて検討した結果、肥満母獣のインスリン抵抗性が対照群に比し高く、高脂肪食摂餌母獣の胎仔のインスリン抵抗性も増大することも判明した。さらに次世代の検討において、仔マウスのインスリン抵抗性増大と血圧上昇を来たし、母獣高脂肪食摂餌が子宮内のエピジェネティクスに関与する可能性も示した。今回の研究により、炎症性シグナルの鍵分子であるトール様受容体4(TLR-4)ノックアウトマウスを高脂肪食負荷の下、妊娠させることにより、母獣のインスリン抵抗性の改善傾向を認めたが、対照群に比し有意差を認めるには至らなかった。一方、次世代への好影響を予想したが、有意な差は得られなかった。TLR-4アンタゴニストの投与実験も行ったが、母仔への好影響を認めなかった。これらの結果は、炎症性シグナルは多岐にわたり、主経路を遮断するだけではその効果を発揮するには不十分であることを示唆する結果であった。そこで、抗炎症性作用を有するn-3 多価不飽和脂肪酸(PUFA)に着眼し、n-3 PUFAが母獣への高脂肪食負荷による子宮内過栄養環境が胎仔に及ぼすエピジェネティック制御の悪循環を断つことを研究仮説として実験を行った。具体的には、n-3 PUFAリッチを摂餌することにより、母獣の脂肪組織の炎症性変化の軽減を介した次世代のインスリン抵抗性を軽減に寄与することを示した。以上の結果より、妊娠時の脂肪組織における免疫応答を介した病的炎症に対して抗炎症性作用を有するn-3 PUFAの母体への投与は、母体の過度のインスリン抵抗性の改善を介して母体の合併症や児の将来の生活習慣病発症予防に役立つ可能性を示唆するものである。
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Journal of Developmental Origins of Health Disease
巻: 11 ページ: 1-13
10.1017/S2040174418001162
J Diabetes Investig
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/jdi.13044