研究の進行が遅れており、1年研究を延長し計画を進めている。研究計画書に従い、実験を進めており、仮説に近い実験結果を得ている。 子宮内膜症細胞では、正常子宮内膜間質細胞と比較して、semaphorin(SEMA)3Bの発現が増加しており、そのレセプターであるneuropilin(NER)2の発現は減少して いた。また、同様に、real time PCRでも検討したところ、mRNAレベルでも(SEMA)3B mRNAの増加、NER2 mRNA発現の減少という結果を得た。さらにin vivoでも 検討したところ、子宮内膜症細胞の免疫染色では上述のin vitroと同様の研究結果を得ることができた。 細胞伝達系の検討では、子宮内膜症細胞においてphosphatidylinositol-3 kinase(PI3k)は、子宮内膜症細胞において発現が減少しており、これに伴いリン酸化 したaktの発現も同様に減少している。PI3k-akt系の更に下流にあるβカテニン、GSKについても検討を行った。これらの因子は、細胞増殖、アポトーシスに関与 するものであるが、GSKについては正常子宮内膜細胞、子宮内膜症胞間で差はほとんど認められなかったが、βカテニンについては、子宮内膜症細胞においてそ の発現が減弱していた。 今回の研究の結果は、子宮内膜症細胞でSEMA3Bが異常発現することで、PI3k-akt系とその下流にあるPI3K-aktの細胞伝達経路を介してそのシグナルの伝達異常が認められた。子宮内膜症におけるSEMA-NER、PI3k-akt系の経路については、今まで報告がなく、子宮内膜症の病因のひとつとしてこの経路の伝達異常が関与していることが示唆される。
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