本研究助成により、ヒトのサプレシンに相当するマウス遺伝子を世界で初めて単離・同定した。この新規タンパクは、in vitroでの検証によりその細胞融合抑制能が確認され、また、胎盤や子宮などで発現することが明らかとなった。マウスで見つかった初めての細胞融合抑制タンパクであることから、マウスsuppressyn-Sと命名している。さらに、マウスでの遺伝子欠失(GFPノックインノックアウト)を導くための特殊なベクターを構築した。このベクターコンストラクトを元に、筑波大学生命科学動物資源センターとの共同研究を行い、ノックインノックアウト法によるマウスサプレシン遺伝子欠損マウスを作製した。この結果、ファウンダーマウス(片方の染色体で遺伝子欠損が確認されているマウス)の雄4匹を得、さらに交配を繰り返すことで、雌雄両マウスで両アリル(両染色体)に欠損を持つ目的のマウスを作製することができた。このノックアウトマウスの表現系を解析することで、初めてサプレシンタンパクの生体内での機能を証明することが可能となる。現在、このサプレシンノックアウトマウスの交配実験を繰り返し、遺伝子欠損が妊娠成立、維持にどのように影響するかを検証中である。 また、このマウスsuppressyn-Sは、ウイルス感染時に伴う細胞融合(レトロウイルスは感染時に細胞融合を伴うことで感染を成立させる)も抑制することが明らかとなってきた。作製したノックアウトマウスを用いた感染防御メカニズムの解明により、ウイルス感染を抑制するための予防および治療法確立に大きく貢献する可能性が考えられる。
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