研究実績の概要 |
胎盤だけに特異的に発現するmicroRNA(miRNA)が胎盤から母体血中に放出後、周囲にある絨毛膜外栄養膜細胞に取り込まれる。そして、取り込まれたmiRNAがターゲットとなる遺伝子発現を変化させ、胎盤形成に寄与する可能性を示した。またmiRNAの輸送がエクソソームと呼ばれる小胞体を介して行われる可能性を示した(Takahashi H, Placenta, 2017)。つまり、胎盤形成異常が原因で発生する妊娠高血圧腎症と早産における病態形成にこれらのmiRNAが関与することが示唆された。 胎盤形成は妊娠初期に行われ、この過程で母体血中に胎盤由来のmiRNAが流れる。妊娠高血圧腎症や早産を発症する妊婦で妊娠初期から有意に変化するmiRNAを発見し、治療戦略を構築することが我々の最終目標であるが、我々はまず早発型妊娠高血圧腎症発症妊婦の血液5例と健常妊婦の血液5例(27-29週に採取)をそれぞれ採取し、ヒトmiRNA2500種類以上をほぼ網羅した発現比較(アレイ)解析で①全検体で発現あり、②発現に有意差あり(p<0.05かつ2倍以上)、であったmiRNAは60種類みられた。妊娠高血圧腎症で発現が増加したのは52種類(miR-6895-5p, -3918, -4792, -30c-1-3p, -4435, -4459等)、減少したのは8種類 (miR-451a, -8059, -4258, -4634, -4638-3p, -342-5p, -6787-5p, -4708-3p)であった。60種類のうちNCBIデータベース(PubMed)上でも報告のない新規miRNAが26種類存在した。 妊娠初期における妊娠高血圧腎症または早産におけるバイオマーカー探索のための母体血液を200例以上採取した。
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