研究課題/領域番号 |
16K11103
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高橋 宏典 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80544303)
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研究分担者 |
大口 昭英 自治医科大学, 医学部, 教授 (10306136)
石田 洋一 自治医科大学, 医学部, 助教 (70772143)
瀧澤 俊広 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90271220)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧腎症 / 早産 / microRNA / エクソソーム / バイオマーカー / WNT / 絨毛膜外栄養膜 |
研究実績の概要 |
1. 早発型妊娠高血圧腎症(preeclampsia: PE)発症妊婦血液(5例)と健常妊婦血液(5例)の間でマイクロアレイで比較し、差のみられた60種類のmicroRNA(miRNA)のうち、発現差の大きい8種類を挙げ、real-timePCRを用い、個別に発現を解析した。miR-451aおよびmiR-30c-1-3pがアレイの結果と一致した。このうちmiR-451aに注目し、in silicoでターゲットとなる遺伝子を探索し、結合率の高かったCXCL16等3種類に注目した。絨毛細胞株を用いてCXCL16等の発現を解析したが、いずれも豊富に発現していた。一方で、胎盤においてはPE発症例と健常妊婦例の発現を比較すると、興味深いことにmiR-451a発現は血液と胎盤とで真逆の結果(血液におけるmiR-451a発現:PE<健常、胎盤におけるmiR-451a発現:PE>健常)であった。 2. 胎盤形成において重要な役割をはたし、PEと早産発症にも関与する可能性のあるWNTシグナルに注目し、in vitroで実験をすすめた。WNT3A、WNT5A、WNT10Bが接着分子CD44を介して、絨毛外栄養膜細胞の浸潤を促進させていることを見いだした。中でもWNT10Bは新規の絨毛外栄養膜細胞促進因子であることを今回初めて発見した。さらにWNT10Bの経路解析を行い、canonical pathwayとよばれるWNT経路を介して、浸潤調節が行われていることを当該経路促進薬および阻害薬を投与し、証明した。 3. 妊娠初期におけるPEまたは早産におけるバイオマーカー探索のための母体血液を約500例採取した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.PE病態形成における仮説が実際の実験結果と異なることが続き、この検証作業に時間を消費したため 2.網羅的解析では有力な候補であったはずなのに、個々の解析においてはアレイの結果を反映せず、検証実験を繰り返し行い、時間を消費したため 3.患者数の減少に伴い、検体集めが思うように進まなかったため(特に早産研究と妊娠初期バイオマーカー研究) 4.同僚の出産、退職が同時発生し、そのフォローのために臨床に時間をとられ、実験を行う時間がとれなかったため
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今後の研究の推進方策 |
1.妊娠初期の妊婦血液を使用したバイオマーカー研究は引き続き検体採取を継続する。現在約500例を採取したが、疾患発症頻度を考慮すると1000例は求められる。現在のペースだと750例程度までしか採取できないが、逆に当院での疾患発症率が予想より高く、集積症例数が750例程度でも、統計学的に妥当性のある症例数を集積できる可能性がある。統計学的に妥当性のある症例数まで集積できれば、本年度中の論文完成までは困難と予想されるが、バイオマーカー研究は実施でき、目的とするmiRNA発現を解析する。もし検体数が不足すれば、preliminaryな解析だけでも実施したい。 2.miR-451aがCXCL16等を直接ターゲットにしているか、レポーター解析を実施する。 3.miR-451aとCXCL16等が関わる機能についてアポトーシスと浸潤に焦点をあて、細胞株で検証する。 4.早産研究については早産発症検体が集積しきれておらず、症例対照研究(早産vs.対照健常妊婦でのアレイ解析)が行えていない。引き続き検体集積を行うが、最終年に入ることもあり、PE研究に集中することも考慮している。 5.WNT研究については論文作成中であり、投稿、出版まですすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)初年度研究の進捗状況により、実験を要する消耗品の次年度購入が新たに発生したため (使用計画)実験に要する物品(プライマー、抗体、アレイパネル)を購入する。学会費も余裕があれば捻出させていただきたいが、実験に要する物品の方を優先する。
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