研究課題/領域番号 |
16K11107
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小野 政徳 金沢大学, 附属病院, 特任准教授 (70348712)
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研究分担者 |
丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (10209702) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子宮筋腫 / 子宮筋腫幹細胞 / 組織幹細胞 / 子宮筋 |
研究実績の概要 |
子宮筋腫は,雌性生殖器に発生する腫瘍のなかで最も頻度が高く,過多月経・月経痛・不妊など多彩な症状を惹起する(Bulun, NEJM, 2013).子宮筋腫は,性ステロイド,生理活性物質,環境因子,遺伝的修飾等の作用を受けることにより,子宮平滑筋細胞が子宮筋腫細胞に変化して,それを起源として単一細胞由来(モノクローナル)の腫瘍を形成するとされている.月経時には子宮に虚血が起きることでさらに低酸素下の環境になると考えられており,晩婚化・少子化における生涯月経回数の増加は子宮筋腫の罹患率を上昇させる. モノクローナルであるとされている子宮筋腫の発生起源に関して,幹細胞の関与が示唆されている.子宮は妊娠時に子宮平滑筋細胞の増殖と肥大により著明な増大を示し,分娩後は退縮する.この子宮の増大と退縮は,生殖年齢さらには人工的に生殖年齢を過ぎても再現することができる.このような子宮の高い再生能力は,子宮における幹細胞システムの存在を示唆している. 子宮筋腫は,雌性生殖器に発生する腫瘍のなかで最も頻度の高い疾患ではあるものの,発生機序が良く分かっていないために有効な治療法が無く,子宮筋腫に罹患した際の患者個人および社会における損失は極めて甚大である.子宮筋腫は,性ステロイド,生理活性物質,環境因子,遺伝的修飾等の作用を受けることにより,子宮平滑筋細胞が子宮筋腫細胞に変化して,それを起源としてモノクローナルな腫瘍を形成するとされている 本研究「子宮筋腫に対する新規治療戦略の開発」は,子宮の幹細胞システムに着目して,子宮筋・子宮筋腫幹細胞を標的とする新しい治療法の開発をすることを目的とし以下の解析を行っている. 【1】子宮筋・子宮筋腫細胞における幹細胞の同定・分離・機能解析 【2】子宮筋・子宮筋腫幹細胞での子宮筋腫の発育に関連する遺伝子発現と機能解析
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は、子宮平滑筋細胞を性ステロイドで処理する事により,Wingless-type (WNT)リガンドが分泌され,傍分泌(パラクライン)により子宮筋腫幹細胞のβ-カテニン(CTNNB1)のシグナルが増強され,性ステロイドがWNT/CTNNB1を介して子宮筋腫幹細胞を増殖させることを示した(Ono, et al. Biology of reproduction; Ono, et al. Proc Natl Acad Sci U S A). また,CD34およびCD49bの発現に基づいて3つの子宮筋腫細胞集団すなわちCD34 + / CD49b +の子宮筋腫幹細胞、CD34 + / CD49b-の中間細胞、CD34- / CD49b-の成熟子宮筋腫細胞に分けられることを報告した(Yin, et al. JCEM)。またマイクロアレイ遺伝子発現プロファイリングおよび経路分析を行いインスリン様成長因子(IGF)経路に着目した。子宮筋腫幹細胞におけるIGFシグナル伝達経路においてIGF2とインスリン受容体-A(IR-A)が、子宮筋腫幹細胞の増殖にとって重要であることを示した(Moravek, et al. JCEM) 。 現在これらの結果をふまえて子宮筋腫に対する新規治療戦略の開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
子宮筋CD34/CD49b陽性細胞およびStro-1/CD44陽性細胞をレンチウイルスベクターを用いて恒常的に蛍光とルシフェラーゼを発現させることでマーキングを行う.蛍光を発する子宮筋腫幹細胞候補集団を無標識成熟子宮平滑筋細胞ととともに免疫不全マウスの腎被膜下に移植する.再構築された子宮筋腫組織のサイズを計測し,腫瘍形成能の高い細胞集団を選定する. さらに免疫不全マウス腎被膜下で形成された子宮筋腫における各子宮筋腫幹細胞の病変部での位置を蛍光顕微鏡で観察する.子宮筋腫病変での細胞動態と子宮筋腫モデル動物病変を比較して子宮筋腫幹細胞の免疫不全マウス腎被膜下移植が子宮筋腫モデル動物として妥当かを検討する. 子宮筋腫モデルマウスを用いた薬剤効果の評価 1)子宮筋腫幹細胞を用いた子宮筋腫モデルマウスの中で性ステロイドが,Transforming frowth factor-β (TGFB)/SMAD, WNT/β-カテニン(CTNNB1), Retinoic acid, Vitamin D, Peroxisome proliferator-activated receptor γ (PPARγ), IGF経路とどのように関わっているのか検討する.具体的には性ステロイドで処理した群と処理しない群での各シグナルの解析を行う.またレンチウイルスベクターで標識された幹細胞と周囲の細胞とでの発現の違いにも着目する. 2) 1)の結果をもとに幹細胞の増殖を抑制する可能性のある薬剤を選別する. 3) 2)の結果より,幹細胞をターゲットとした薬剤を投与することでモデル動物での治療効果判定を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は2,289円でありほぼ計画通りに使用させていただいております。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も引き続き当研究を継続させていただきます。
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