研究課題
昨年度までに、子宮内膜症病変の腺上皮細胞ではEMTが起こっていることが免疫組織化学的検査によって証明できたため、本年度は正所性子宮内膜の上皮がEMTを起こすか否かを評価し、正所性子宮内膜が内膜症病変成立に貢献し得るかどうかの検討すること、そして、EMT阻害薬によって正所性子宮内膜腺上皮細胞のEMTを抑制することができるかを評価し、EMT阻害薬の新規子宮内膜症治療薬としての可能性を検討することを目的とした。同意を得た上で、手術検体から正所性子宮内膜を採取し上皮細胞を分離、培養した。培養した腺上皮細胞に対してEMT促進剤であるTNFαとTGFβを用いてEMTの誘導実験を行い、細胞形態、western blottingによるタンパク発現、接着能の変化を解析した。また、EMT阻害剤の持つ接着能や移動能の抑制効果を評価するために、子宮内膜上皮不死化細胞を用いた細胞接着能阻害実験および、正所性子宮内膜上皮細胞を用いたWound healing assay(WHA)とTransmembrane migration assay(TMA)を行った。EMTの誘導実験では、細胞形態は線維芽細胞様に変化し、E-cadherinとN-cadherinの発現の逆転現象であるカドヘリンスイッチ現象を認めた。細胞接着能試験では、EMTの誘導により接着能が有意に上昇した。以上のことから腺上皮細胞においてEMTが起こることが証明され、正所性子宮内膜上皮細胞が、子宮内膜症病変の確立に貢献しうることが明らかとなった。また、細胞接着能阻害実験では、EMT阻害薬によってEMT促進剤により上昇した接着能が低下し、接着能の抑制効果が確認された。またWHAとTMAでは、EMT阻害薬により子宮内膜上皮細胞の移動能が低下し、運動能の抑制効果も証明された。よって、EMT阻害薬の新規子宮内膜症治療薬としての可能性が示唆された。
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