研究課題/領域番号 |
16K11110
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
内田 明花 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60445236)
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研究分担者 |
丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (10209702)
内田 浩 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90286534)
升田 博隆 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80317198)
日原 華子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80626458)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 着床 / 細胞死 / 細胞運動 / 子宮内膜上皮細胞 |
研究実績の概要 |
体外受精の不成功原因の70%以上は着床ステップのロスによる。排卵誘発、受精技術の向上に着床技術の向上が伴わない最大の要因は着床研究の物理的・倫理的な制限にある。ヒトと完全一致するわけではない齧歯類での研究からある程度の類推が成立するにしても、ヒトの着床は齧歯類や霊長類以外の哺乳動物とは一線を画す部分が少なくないため、ヒト着床メカニズムの解明には遠く及ばず上記のような臨床結果を示している。 ヒト着床研究はもっぱら in vitro による着床アッセイに依存しているが、わずかに得られている知見では、胚が子宮内膜上皮バリアを通過する際に、子宮内膜上皮細胞が細胞死に陥ることで胚の陥入ルートとも表現出来るバリアの欠損が現出することが報告されている。ただし、細胞死による胚陥入ルート形成は物理的な空隙形成によって完結するとは考えにくい。胚陥入後のsequential な「着床」プロセスに空隙形成以外の第二の意義があると想定している。 そのひとつの候補案として、細胞死による子宮内膜上皮細胞体の破壊そのものが次に続く着床における生理現象のトリガーとなっているという仮説を立てている。 平成29年度までにin vitro 着床アッセイにおいて胚モデル添加によって、確かに子宮内膜上皮細胞層に細胞死が起こっていること(ただし、既報のように胚モデル直下に限るわけではない)、抗Fas抗体でコートしたビーズを添加して細胞死を誘導することで、胚モデルを添加することなく子宮内膜上皮細胞層の細胞死を惹起出来ること、引き続きその状況で添加した胚モデルの進展に加速的な効果を及ぼすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の時点で参考論文の3μmサイズのビーズよりも大きいサイズのビーズ(胚サイズを意図したサイズアップ)への抗Fas抗体コーティング効率が劣り、条件設定に苦慮した。超音波破砕装置を用いた機械的子宮内膜上皮細胞体破壊を意図して条件設定を繰り返していたが、結局満足出来る条件を見いだすことができず時間を要した(方針を変更して、機械的な子宮内膜上皮細胞体破壊は超音波破砕装置からスクレイパーによる用手的な破壊に変更した)。 本研究の根幹にあたる細胞死による子宮内膜上皮細胞体破壊によって漏出する子宮内膜上皮細胞内容(UDP glucoseを中心とした因子)が着床にとって合理的かつ肯定的に効果を及ぼすという仮説内容に対して、解析ツールとしての子宮内膜上皮細胞内容のサンプリングに成功したため、停滞していた研究進行は改善すると想定している。
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今後の研究の推進方策 |
抗Fas抗体コートビーズによる人為的細胞死の条件に加えて、機械的な子宮内膜上皮細胞体の破壊による細胞内容の露出を想定して、スクレイパーによる機械的な処理を飽和培養子宮内膜上皮細胞に施し、子宮内膜上皮細胞内容を含むと考えられる培養上清を採取する。その培養上清を添加することによって、 in vitro 着床アッセイによる胚モデルの子宮内膜上皮細胞層へのcross reactionに変化が起こりうるのかという点につき、解析する。 具体的には子宮内膜上皮細胞の細胞増殖機能変化をMTS assay を用いて定量解析する(胚モデルの添加によって細胞死が惹起されるが、細胞死は限局的な反応であるため、胚モデル近傍で細胞死に陥っていない子宮内膜上皮細胞に増殖能の変化が認められる可能性はある)。 同時に細胞死による胚通過ルートの空隙形成を加速度的にアシストしうる遠心性細胞運動に子宮内膜上皮細胞内容が加速的影響を及ぼしうるかという点に関して、real time video recordingによる動画解析によって運動速度を算出し定量解析を行う。 さらに変化を及ぼさないのではないかと想定しているが、胚モデルの子宮内膜上皮細胞層への接着性に関する定量解析も接着胚モデル数を指標に行う。 最終的にはそれらの細胞機能変化のメカニズムがTLR9由来であるかどうかという点について、TLR9の発現量変化解析、TLR9阻害実験などを通じて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の進捗状況で述べた通り、今年度はやや遅れをとっている。それにより購入予定であった物品の経費として計上していた分が未使用となり、次年度へ繰越となった。しかし研究進行は改善する方向であるため、当初の次年度額と併せて適宜必要な消耗品等に充てていく。
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