研究課題/領域番号 |
16K11111
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
吉武 洋 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (00396574)
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研究分担者 |
荒木 慶彦 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 先任准教授 (70250933)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗精子抗体 / バイセクト型糖鎖 / CD73 |
研究実績の概要 |
精子に対する自己抗体(抗精子抗体)は不妊症の原因の1つと考えられている。我々の研究グループが樹立した自己抗体由来の抗精子単クローン抗体Ts4は、マウスの体外受精阻害能を有し、その抗原決定基はバイセクト型N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を含む糖鎖構造である。免疫組織化学的検討により、Ts4は成獣の精子・精巣内生殖細胞、及び初期胚に反応するが、一方卵細胞や体細胞には反応しないことから、本抗体の反応糖鎖は受精や雄性生殖細胞の形成に関与することが想定される。しかしその詳細は未だ不明である。Ts4反応糖鎖の生殖における機能解明を最終目的として、本研究ではまず胎生期から成獣にかけての精巣内Ts4反応分子の局在と生化学的特徴を解析した。さらに本糖鎖構造が付加されている糖タンパク質の同定を試みた。免疫組織化学的解析では、Ts4反応分子の発現は胎生期の精巣から認められた。その局在は成熟に伴い変化し、生後22日以降では成獣精巣と同様の局在を示した。生後1日から成獣までの精巣をウェスタンブロット法で解析したところ、生後29日以前では約65 kDa、それ以降では生殖細胞特異的分子TEX101に対応する38 kDaの分子がTs4によりそれぞれ検出された。この65 kDa分子をTs4の標的候補分子として解析を進めた。免疫沈降後、SDS電気泳動・銀染色を行い質量分析した結果、複数の候補分子が得られ、その中でCD73がTs4反応糖鎖と連関することが判明した。本研究により、成熟に伴い雄性生殖細胞上のTs4反応糖鎖被修飾分子が変化することが初めて明らかになり、さらに本抗体が反応するバイセクト型GlcNAc糖鎖は、CD73を介して幼獣の雄性生殖細胞の成熟に関与することをが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の研究目的は精細胞におけるTs4抗体が認識するバイセクト型糖鎖で修飾された糖タンパク質の同定である。その方法として免疫沈降法により本抗体 の対応抗原を精製し、高速液体クロマトグラフィー/質量分析法を用いて解析した。当初の計画通り、性成熟前のTs4認識候補分子を同定することが可能であっ た。しかし2018年度秋から2019 年度春まで動物実験施設において空調更新工事が行われ、動物を使用する実験を中止しなければならなくなったため、機能解明までは遂行できず、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
同定されたタンパク質をコードする遺伝子を培養細胞株に導入し、Ts4対応抗原発現細胞株を作製する。次に発現させたタンパク質にTs4反応性バイセクト 型糖鎖が修飾されていることを確認する。修飾されている場合には、本糖鎖構造をペプチドに付加するN-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT-III)に対する siRNAを導入し、バイセクト型糖鎖合成を阻害したときの細胞動態を解析する。バイセクト型糖鎖が発現タンパク質に付加されていない場合には、GnT-III遺伝子 が高発現している細胞株を選別し使用する、あるいはGnT-III遺伝子を導入して実験に供する。また遺伝子改変マウスを用いて、生体内におけるTs4反応糖鎖構造の機能解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度秋から2019 年度春まで動物実験施設において空調更新工事が行われ、動物を使用する実験を中止しなければならなくなり、次年度使用額が生じた。今後動物を使用したTs4認識分子の生物学的機能解明を行う予定である。
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