研究課題/領域番号 |
16K11113
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
吉江 幹浩 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (50434014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PGRMC1 / 脱落膜化 / 子宮内膜細胞 / 栄養膜細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、子宮・胎盤におけるプロゲステロン(P4)の作用について典型的なP4受容体(PR)とは異なるPR膜構成因子1(PGRMC1)やmembrane PR(mPR)などの非古典的PRを介した作用について妊娠成立・維持に不可欠である子宮内膜間質細胞の脱落膜化、胎盤形成、さらに、分娩に着目してその役割を解明することである。 本年度は、PGRMC1のラット妊娠初期子宮における時間・空間的発現様式と子宮内PGRMC1の着床と子宮間質細胞の脱落膜化との関連性について検討した。また、ヒト胎盤栄養膜細胞の分化に関わるシグナル伝達機構についても解析した。Wistar-今道系ラットの妊娠3、5、7、9日目(交配日を妊娠0日目とする)の子宮におけるPGRMC1の発現と局在を解析し、さらに着床遅延モデルと人為的脱落膜化誘導モデルを用いて、着床時並びに脱落膜形成時のPGRMC1 発現の変化を調べた。着床前である妊娠3、5日目の妊娠子宮では、PGRMC1は、腺上皮細胞、管腔上皮細胞と間質細胞に発現がみられ、妊娠5日目では管腔上皮の直下に位置する間質細胞にも局在していた。着床後である妊娠7、9日目の子宮では、間質細胞が増殖・分化した脱落膜細胞、腺上皮細胞と管腔上皮細胞にPGRMC1の発現が観察された。着床遅延モデルを用いた検討により、着床を誘起した子宮では、着床胚を取り囲む脱落膜細胞でPGRMC1発現が亢進すること、偽妊娠子宮にオイルを投与して人為的に誘導した脱落膜においてもPGRMC1発現が亢進することを明らかとした。以上の結果から、ラット妊娠初期子宮におけるPGRMC1の発現は、時間・空間的に制御されており、腺上皮や管腔上皮における役割と間質細胞の脱落膜化への関与を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット子宮におけるPGRMC1の発現解析などにより、着床と脱落膜化との関連性を示唆する知見が得られている。また、ヒト栄養膜細胞の分化機構に加え、子宮内膜間質・上皮細胞を用いたin vitro研究により、PGRMC1の新たな機能の解明にアプローチすることができているため。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた、CRISPR/Cas9システムを利用したPRとPGRMC1の子宮内膜・筋細胞並びに栄養膜細胞株の作製とそれらを用いた非古典的PRシグナル伝達因子の同定が滞っているため、これを遂行する。また、PGRMC1阻害薬などを用いて、上記細胞における役割を解析する。さらに、早産や子宮内膜症といった病態における非古典的PRの関与について動物モデルやヒト検体を用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた①ゲノム編集技術を利用したヒト子宮内膜細胞・筋細胞株、並びに胎盤栄養膜細胞におけるPGR、PGRMC1ノックダウン細胞の作製と②非古典的PRを介したシグナル伝達因子の同定に着手できなかったため一部予算の執行が滞った。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の研究計画を予定通り行う。
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