研究課題
2009年にパンデミックを引き起こしたインフルエンザウイルスは妊婦をはじめとした、基礎疾患のある人、乳幼児などで重症化が報告されている。幸い本邦では、妊婦の死亡は 報告されていないが、海外では死亡や入院率の増加が報告されている。 本研究では、2009年にパンデミックを引き起こしたH1N1株であるA/Kyoto/KU4/2011(K4)を用いて妊娠感染動物モデル作製し、ウイルスの感染初期に重要な役割を果たす自然免疫系の一つである自然免疫リンパ球(ILC)に着目し、妊娠中のインフルエンザウイルス感染が母児に及ぼす影響と重症化するメカニズムの解明を目的とした。H1N1インフルエンザウイルスに感染した非妊娠マウスでは、著しい体重減少を認めた。妊娠マウスでも、著しい母体重の抑制が認められた。胎仔重量の抑制が認められたが、胎児数に違いは認められなかった。肺組織において感染防御に重要な働きをするIFN-βの発現を検討したところ、非妊娠マウスではH1N1の感染により300倍程度の増加が認められた。一方、妊娠マウスでは3000倍程度まで増加していた。ILCは3つのグループに分類されるため、それぞれの転写因子であるT-bet(ILC-1)、GATA-3(ILC-2)およびRORγt(ILC-3)の発現を検討した。非妊娠マウスと妊娠マウスで発現が異なったのはGATA-3であり、感染妊娠マウスで増加しており、ILCの関与が示唆された。また、GATA-3はTh2の転写因子でもあり、妊娠中はThのバランスがTh2になることが知られているが、インフルエンザウイルスの感染により、さらにGATA-3が誘導されていた。また、感染妊娠マウスでは、Foxp3、IL-10などが誘導されており、妊娠を維持する免疫応答と感染防御に対する免疫応答の違いが考えられた。
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