研究実績の概要 |
産婦人科領域の絨毛性疾患である胞状奇胎の多くは、雄核発生(ゲノム欠損卵子に1精子受精あるいは2精子受精)や正常卵子に2精子受精が原因で発症すると考えられている。一方、父母に由来するゲノムを1セットずつ継承しているにもかかわらず、母親の染色体19番にコードされているNLRP7 (NLR family, pyrin domain containing 7) 遺伝子に変異があると繰り返して胞状奇胎(反復胞状奇胎)を発症することが我々のグループを含めて複数のグループから報告されている。NLRP7遺伝子変異がどのように胞状奇胎の病態を形成するか、そのメカニズムは不明である。本研究の目的は、ゲノム編集CRISPER/Casシステムを利用しNLRP7遺伝子を破壊した反復胞状奇胎の疾患モデルヒト細胞を作成し、NLRP7遺伝子の機能の一端を明らかにすることである。 trophoblast cell lineの HTR-8/SVneoを利用して、CRISPR/Casによるダブルニッキング法でゲノムの改変を行った。複数のクローンからゲノムDNAを抽出し、サンガー法でゲノムDNAの塩基配列を調べた結果、ゲノムDNAの改変のパターンから遺伝子破壊ができていると思われる細胞株が2つ得られた。2つの細胞株におけるNLRP7タンパク質のレベルをウエスタンブロッティングで調べた。市販の抗体2つのうち1つの抗体は非特異的なバンドを複数認め、NLRP7タンパク質の検証ができなかった。もう1つの抗体で、コントロールの細胞に比べてタンパク質の減少が確認された。 今後は、胞状奇胎に特徴的な形態変化の有無、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の産生増加などを調べる。胞状奇胎の特徴を備えていることが検証できたら、NLRP7遺伝子破壊のよる表現型の解析を行う。
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