ES細胞を用いた相同組み換えによって作成した脂質代謝遺伝子PLCzコンディショナルノックアウトマウスの妊孕性解析を行った。その結果、floxed雄の妊孕では認められたが、ホモ欠損雄マウスは不妊であることが明らかとなった。Floxed雄およびホモ欠損雄からブアン固定した精巣と精巣上体を採取し、パラフィン切片を作製、形態を比較した。その結果、Floxedマウスの精巣上体から正常精子が認められたが、ホモ欠損マウスの精巣上体から精子は認められず、変性した細胞が多く認められた。ホモ欠損マウスの精巣は野生型と比較して小さく、空胞や多核の巨細胞など脱落した細胞を多く認めた。PAS染色によりステージングを行なったところ、ステージXIIでは伸長期精子細胞は認められないものの、減数分裂中期の細胞に異常は認められなかった。ステージIIIにおいても伸長期精子細胞は認められなかったが、先体を有したステップ3円形精子細胞が認められ、精母細胞、精祖細胞に異常は認められなかった。ステージIVにおいても同様で、伸長期精子細胞は認められなかったが、円形精子細胞が認められ、精母細胞、精祖細胞に異常は認められなかった。ステージVでは、空胞と円形精子細胞と思われる変性した細胞が多く認められたが、精母細胞、精祖細胞に異常は認められなかった。 しかし、CRISPER/Cas9システムによる遺伝子破壊では、精子形成に著しい異常はない。このことから、ホモ欠損マウスから採取した精巣においてCapza3を含む標的遺伝子近傍の遺伝子を含めて解析を行った結果、野生型と比較して異常が認められなかった。精子形成の異常に関して、PLCzの近傍にあるCapza3への影響が懸念されていたが、今回の結果から、本マウスの精子形成異常は単純にPLCzが欠損したものでも、近傍遺伝子に影響を及ぼした結果ではないことが明らかとなった。
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