研究実績の概要 |
新規に易転移性卵巣がんSKOV3細胞株(4株:M1-1, M1-2, M1-3, M1-4)を樹立した。これらの易転移性細胞株の細胞内セラミド量および遺伝子発現変動を、それぞれ質量分析法およびRNAseq トランスクリプトーム解析法を用いて探索した。その結果、いずれの易転移性細胞株(4株:M1-1, M1-2, M1-3, M1-4)のセラミド量およびセラミド合成酵素2の遺伝子発現は親株に比して有意に低下していることが判明した。 そこで、セラミド合成酵素2のがん転移制御への関与を明らかにするために、担癌マウスモデルにおいてセラミド合成酵素2遺伝子ノックダウンの腹膜転移への影響を検討した。その結果、セラミド合成酵素2ノックダウンにより、がん転移は促進することが明らかとなった。 さらに、セラミド合成酵素2を介した抗がん転移機序の解明のために、まず細胞運動性および浸潤性に対するセラミド合成酵素2ノックダウンの影響を探索した。その結果、セラミド合成酵素2ノックダウンにより、細胞運動性が亢進することが判明した。しかしながら、細胞浸潤性は変動しなかった。さらに同条件下に細胞内セラミド量を測定したところ、セラミド合成酵素2ノックダウン細胞では有意に極長鎖セラミド量が減少した。 セラミド合成酵素2を介して生成されたセラミドは細胞膜に輸送され、細胞膜上もしくは近傍において細胞運動性を抑えると考えられる。そこで、選択的に細胞膜セラミド量を増加させたところ、細胞運動性は有意に低下した。 以上のことから、セラミド合成酵素2を介したセラミド生成は卵巣がん細胞の運動性を抑えることでがん転移を抑制すると考えられる。
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