研究課題
卵巣がん転移でのセラミド生成・代謝酵素の病理生物学的意義を解明する.これまでにセラミド合成酵素2の遺伝子発現が易転性卵巣癌細胞株において低下していることを見出した.この酵素の発現低下は癌細胞の転移能亢進に寄与している可能性が考えられる。そこで、今年度ではセラミド合成酵素2の癌転移制御への関与について明らかにした。セラミド合成酵素2による細胞運動性および浸潤能制御CRISPR-Cas9 システムをを用いて,セラミド合成酵素2遺伝子欠損卵巣癌細胞株の樹立を試みたところ,セラミド合成酵素2のタンパク質を発現していない一つの細胞クローンを単離することが出来た。さらに遺伝子解析により当遺伝子の欠損を確認した.また,セラミド合成酵素2ノックダウンの細胞運動能(仮足形成およびボイデンテャンバーを用いた遊走能)への影響を検討した結果,セラミド合成酵素2のノックダウンにより卵巣癌細胞の運動能は有意に亢進した.さらに浸潤能も同様にノックダウンにより更新した.また,セラミド合成酵素2を欠損・ノックダウン細胞での細胞内セラミド量を質量分析法により測定したところで,いずれの細胞においても細胞内セラミド量がそれぞれ親株・コントロールノックダウン細胞に比して有意に減少した.細胞内でのセラミドはセラミダーゼにより代謝分解されることから,当酵素の転移制御への関与が考えられる.そこで当酵素の運動能制御への関与を検討している.以上のことから,セラミド合成酵素2は細胞内セラミド量を調節することで卵巣癌細胞の運動能・浸潤能を抑制すると考えられる.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り,セラミド合成酵素2の卵巣癌転移制御への関与を示す結果を得たため,当研究課題の進捗は順調である.
セラミド合成酵素2の卵巣がん転移制御への関与を担癌マウスモデルにおいて検証する.
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Molecular Cancer Therapeutics
巻: 17 ページ: 50-59
10.1158/1535-7163.MCT-17-0173