研究課題/領域番号 |
16K11127
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
佐藤 直樹 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40447199)
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研究分担者 |
高橋 和江 秋田大学, 医学部, 医員 (40764072) [辞退]
加藤 彩 秋田大学, 医学部, 医員 (70764059)
寺田 幸弘 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10260431)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子宮体癌 / リンチ症候群 / 識別戦略 |
研究実績の概要 |
リンチ症候群(LS)はミスマッチ修復(MMR)遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6,PMS2)の生殖細胞系列変異を主な素因としたDNA修復機構の障害により多種の癌が高頻度に発生する常染色体優性遺伝の症候群である。日本の子宮体癌(EC)におけるLSの臨床像を明らかにし、効率的な識別戦略を考案すること、を主目的に研究展開した。倫理委員会承認と患者同意を経て、EC患者360例を対象に後方視的研究を実施した。高感度一次選別として新規の臨床基準(APF基準)を設計し、合致例の腫瘍組織にMMR蛋白に対する免疫染色(IHC)と選択的メチル化解析を行った。以上により40例(11.1%)を「LS疑い」として選出し、その特徴と独自戦略の優れた効率性を総合誌に報告した。更に、IHCで検出されるPMS2蛋白単独欠損がMLH1プロモーター領域の高メチル化によって引き起こされることを発見し、遺伝子解析による傍証を添えて専門誌に報告した。全例への分子学的評価(US)を追随し、「LS疑い」例に遺伝子解析を加え、USによるLS識別も成就した。その結果から日本のECにおけるLS女性の割合を約4.5%と推定した。「LS様の分子学的特徴を示すがMMR遺伝子に病的変異を認めない例」はLynch-like cases(LL)と称され、認知途上で管理指針もない。その臨床的特徴を捉えることを派生課題とし副次解析を行った。USで選出した「LS疑い」42例中25例に遺伝子解析を行いLS群(10例)、LL群(15例)に分類し、散発癌群(306例)と共に比較した。LS群は「若年発症」「関連癌病歴」「関連癌家族歴」において他群より高頻度、LL群は「関連癌家族歴(特に胃癌)」において散発癌群より有意に高頻度であった。ECにおけるLSとLLをアジア圏で初めて弁別し、その特徴や差違と地域性を捉え、世界初の詳報として専門誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該課題における後方視的な評価と解析は順調に進み、研究は総括・検証の段階に至っている。関連各学会における成果発表を錬磨の機会とし、複数の原著・解説論文として成果報告の準備を進めている。研究過程で派生した関連課題に対しても分析を加え、副次的成果も得ている。2015年に報告した独自戦略の検証作業も進めて、臨床応用(識別戦略と管理指針の考案)への地固めを行う。確立された手法を活用した開拓領域の後方視的研究であるため、研究進捗に具体的な停滞の危惧は小さいが、不測の障害に対しては共同研究者や所属施設の支援を集めて対処する。
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今後の研究の推進方策 |
研究で得られた有益な医学情報を広く社会還元するため、現在は成果報告の品質管理に取り組んでいる。今後は本研究の成果を前方視的な研究や臨床応用に発展させるため、新規の研究計画と対象や評価法の選別も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初に計画した分子学的評価と遺伝子解析は、経費を節減しつつ大半を完了した。主課題及び派生課題においては今後も追加検証の必要性を残す因子があるため、残額は次年度使用額として活用してゆきたい。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画および報告した関連課題に則し、妥当性の担保された分子学的評価および遺伝子解析のみを追加する。また、成果報告の洗練および発展研究の基盤整備に対しても翌年分助成と併せて運用してゆく。
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