研究課題
【目的婦人科癌幹細胞自体の機能解明とその幹細胞性を支える癌微小環境における癌関連線維芽細胞や腫瘍関連マクロファージとの相関の解明を目的とした。【方法】子宮頸癌はヒトパピローマウイルス (HPV) が扁平上皮-円柱上皮移行帯 (SC-junction) に感染して癌化に至ることから[1] SC-junctionにある組織幹細胞、リザーブ細胞に注目し、iPS細胞からリザーブ細胞を樹立した。 [2] HPV16, 18陽性の子宮頸癌細胞株 (SiHa、Caski、HeLa) を非接着性プレートで3D培養し、CSC(癌幹細胞)を作成した。CSCのapoptosis耐性の個別化をみるため、抗癌剤、apoptosis誘導剤添加でCSCへストレスを与え、apoptosis誘導能を評価した。CSCと通常の癌細胞 (CC) の比較からCSCに特異な性質を同定した。【結果】[1]EGFなど各種サイトカインを組み合わせることでiPS細胞からリザーブ細胞モデルを作成した。iPS細胞由来リザーブ細胞はHLA-Gを強発現を示した。[2] SiHa、Caski、HeLaの3種類のCSCは形態学的に異なり、球形形成能はCaskiが最も高くCSCへの脱分化能が強かった。SiHaのCSCはストレス誘導剤添加でER stressを与えてもapoptosisに至らなかったが、ER stress経路阻害剤の併用でapoptosisに至った。またシスプラチン添加で、CSCはapoptosis耐性であったが、シスプラチンとER stress経路阻害剤の併用でapoptosisに導いた。【結語】計画の初年度であり、研究計画の前半部分について研究を行った。CSCはapoptosis耐性など治療抵抗性を獲得した特異な細胞集団であり、今後は癌周囲の細胞との相関など “CSCの個別化” とそれに対応した治療戦略が重要である。
3: やや遅れている
子宮頸がん癌幹細胞モデルの構築に注力しているが、iPS細胞自体のハンドリングの困難さなどもあり、リザーブ細胞の定性的な維持、構築が困難であった。さらにリザーブ細胞に癌タンパクであるHPV16 E7遺伝子導入をすること、その後の培養モデル作成に困難さがあった。しかし、最終的にはリザーブ細胞に前述の癌タンパクを導入することができたことから大幅な遅れはなく次年度以降は計画どおりに進行することが期待される。また、計画の遅れを考慮してそれとは別方向に既存の癌細胞株を用いて癌幹細胞モデルを樹立し、アポトーシス耐性などについて研究を行っている。
最終的にはリザーブ細胞に前述の癌タンパクを導入することができたことから大幅な遅れはなく次年度以降は計画どおりに進行することが期待される。また、同時並行で癌細胞株からの癌幹細胞モデルの樹立とマウスへの皮下腫瘍形成能などをみる研究を行っていく方針である。
予算のほぼ全額を使用したが、細かい部分については適正価格を検討していただいているため調整が難しい。基本的には予定通りの使用方法と考えている。
本年度と同様に物品やその他(遺伝子の解析費用など)に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Oncotarget
巻: Epub ahead of print ページ: 000-0000
doi: 10.18632/oncotarget.16783
巻: 7(32): ページ: 51854-51864
doi: 10.18632/oncotarget.10126