研究課題
① Anx A4 が細胞内プラチナ蓄積量を減少させた機序の解明我々は過去の検討からAnx A4がプラチナトランスポーターの働きを促進し、プラチナ排出量が増加することを見いだしている。子宮平滑筋肉腫細胞株においてどの様なトランスポーターが発現しているかを解析するために、子宮平滑筋肉腫細胞株であるSK-LMS、SK-UT1、SKN細胞株を用いiTRAQ法にて細胞膜表面に発現する蛋白質を網羅的に解析した。その際に、複数個のプラチナトランスポーターを同定するとともに副次的に、子宮平滑筋肉腫細胞に特異的に発現する膜蛋白質Xを同定した。② 膜蛋白質Xの発現抑制は子宮平滑筋肉腫細胞株の増殖を抑制したWestern Blotting法を用い、子宮平滑筋肉腫細胞株での膜蛋白質Xの発現を検討したところSK-LMS、SKN細胞株で発現を認めた。SK-LMS細胞株に対し、膜蛋白質XのsiRNAを遺伝子導入し発現を抑制したところ、7日目の解析において72%の増殖抑制を認めた。そのため、膜蛋白質Xが子宮平滑筋肉腫細胞株の増殖において重要な役割を有していることが示された。③ 膜蛋白質Xの中和抗体は子宮平滑筋肉腫細胞株の増殖を抑制した膜蛋白質Xの中和抗体を、子宮平滑筋肉腫SK-LMS細胞株に投与したところ7日目において、28%の増殖抑制が認められた。そのため、膜蛋白質Xに対する中和抗体は子宮平滑筋肉腫の治療標的になると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
29年度計画はほぼ終了している。Anx A4の発現抑制は効果的なプラチナ耐性改善を示していたが、膜蛋白質Xの解析を優先したのは、膜蛋白質Xが子宮平滑筋肉腫の有望な治療標的であることが示されたためである。Anx A4の発現を抑制する方法は現時点では開発できておらず、中和抗体がある膜蛋白質Xの解析を優先する方針とした。
膜蛋白質Xの機能解析(1)SK-LMS細胞株に対して膜蛋白質XをsiRNAの遺伝子導入により抑制し、親株と発現を抑制した細胞株とを比較、検討する。Western Blotting法によりどのシグナルが抑制された結果、増殖が抑制されたかを解析する。(2)膜蛋白質Xに対する中和抗体を投与した場合、siRNAを遺伝子導入した際と同様のシグナルが抑制されるかを検討する。(3)SK-LMS細胞株を用いて、Xenograftモデルを作成し、膜蛋白質Xに対する中和抗体の投与によりin vivoにおいても増殖が抑制されるかを検討する。
膜蛋白質Xに対する中和抗体を追加購入する予定である。また、膜蛋白質Xがどの様な機序で子宮平滑筋肉腫の増殖を促進しているかの解析を行うための試薬を購入する予定である。
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