研究課題/領域番号 |
16K11142
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
前川 亮 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90598749)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | HOXC8 / PPAR gamma / ESR1 / Endometriosis / TGF beta / TNF alpha / driver gene / master gene |
研究実績の概要 |
本研究では、異所性に子宮内膜が増殖する疾患である子宮内膜症の発症において中心的な役割を果たすと考えられるマスター遺伝子の候補を抽出し、実際にそれらの遺伝子が正常子宮内膜間質細胞に子宮内膜症で認めるのと同様の変化をきたすかについて検討を行っている。 抽出されたマスター遺伝子候補9遺伝子のうち、HOXC8について研究を進めている。HOXC8が正常子宮内膜間質細胞と比較して子宮内膜症細胞でmRNAレベル、タンパクレベルで共に高発現であることを確認した。 次に、HOXC8を強制発現するベクターを作成し、正常子宮内膜間質細胞に強制発現させた。HOXC8の強制発現が実際にmRNAレベル、タンパクレベルでも有効に作用していることを確認した後、強制発現細胞から抽出したmRNAを用いてマイクロアレイを用いた網羅的発現解析を行った。その結果、HOXC8を強制発現させた子宮内膜間質細胞では、TGF-beta、Ras、TNF-alphaのpathwayが有意に誘導されていることがわかった。我々は過去の検討で、子宮内膜症細胞でTGF-beta、Ras、TNF-alphaの経路が有意に活性化されていることを明らかにしており、今回の強制発現で活性化したpathwayの結果はこの事実と一致する。更に興味深いことに、これらのpathwayは、近年子宮内膜症の発症メカニズムの一つと考えられている上皮間葉転換(EMT)を引き起こすpathwayとされていることは極めて興味深い。 現在、細胞の浸潤能、増殖能に与える影響について、MTT assay、MMP assayで検討中である。また、他のマスター遺伝子候補であるPPAR gamma、ESR1についてもそれぞれ発現ベクターによる強制発現、SiRNAによるノックダウン実験を施行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は個々のマスター遺伝子候補について、予定通りに強制発現ベクターの作成が進んでいる。また、着目したマスター遺伝子候補について(HOXC8、PPAR gamma、ESR1)順に、作成した強制発現ベクター、ノックダウンのためのsiRNAが目的細胞で作用することが確認されている。HOXC8については強制発現後の発現マイクロアレイ実験が終了し、解析も終了している。現在、HOXC8強制発現細胞の機能解析を進めている。PPAR gammaとESR1についても、現在transfectionを行っており、発現の確認後に発現マイクロアレイ実験に供する予定である。 以上のことから、実験は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
HOXC8の子宮内膜間質細胞での強制発現の影響についての実験が、強制発現ベクターの作成、細胞への導入、導入細胞の網羅的発現解析・機能解析、と順調に進んでいる。現在、同様の手法を用いて、PPAR gamma、ESR1の与える影響についての実験が進行しており、継続して進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に使用した物品費が予定よりも少なかったためである。本年度購入・使用しなかった物品は次年度の実験に必要であり、次年度の使用予定としたい。
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次年度使用額の使用計画 |
全体の実験計画に変更はなく、本年度に予定していた実験を次年度に施行する予定である。実験に必要な物品についても、次年度に使用する予定としたい。
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