研究課題/領域番号 |
16K11144
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
長谷川 ゆり 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70627752)
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研究分担者 |
三浦 清徳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (00363490)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 嚢胞化絨毛 / microRNA / 分子マーカー / 全胞状奇胎 / 侵入奇胎 / 臨床的絨毛癌 |
研究実績の概要 |
平成28年度は検体集積、臨床データ蓄積および胞状奇胎特異的microRNAの発現解析を行った。嚢胞化絨毛疾患の血液検体と組織を一組として計20組を集積した。20例すべてに患者、夫および組織から抽出したDNAを用いてDNA多型解析を行った。20例のうち2例は病理診断では部分胞状奇胎であったが、DNA診断ではいずれの嚢胞化絨毛も雄性発生で全胞状奇胎と診断された。従って、嚢胞化絨毛の診断と治療には病理学的検査に加え、DNA診断がきわめて重要であることが明らかにされた。そして、20例のうち3例に侵入奇胎が認められ、化学療法が施行された。私どもが以前報告している胞状奇胎特異的microRNA(hsa-miR-520f, miR-520b, miR-520c-3p)の発現解析を定量的RT-PCR法を用いて行った。いずれの症例も治療経過の推移とともにその発現量は低下し、治療効果の指標となる分子マーカーになることが再確認された。以上より、嚢胞化絨毛の管理診断には私どもが行っているDNA多型解析並びに全胞状奇胎特異的microRNAの定量解析が臨床応用可能と期待される。来年度以降は、網羅的解析法を用いて絨毛性疾患のうち全胞状奇胎やmesencymal dysplasia、placental site trophoblastic tumorを鑑別しうる分子マーカーを同定し、嚢胞化絨毛の管理や将来の侵入奇胎の予測などへ臨床応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画である、検体集積、臨床データ蓄積および胞状奇胎特異的microRNAの発現解析をすべて実行することができた。従って、研究計画はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は以下の研究を行う。 1. 検体集積:平成28年度に引き続き検体の集積を行う。嚢胞化絨毛患者の治療経過に伴い、適宜、患者から採血を行う。血液は遠心分離した後、血漿を凍結保存する。2. microRNA 抽出(長崎大学産婦人科学教室):平成28年度と同様に行う。3. 嚢胞化絨毛の組織検体における全胞状奇胎特異的microRNAの発現量をRT-PCR法を用いて定量する。実験方法は平成28年度と同様である(長崎大学産婦人科学教室)。4. 嚢胞化絨毛患者の血漿中発現量をRT-PCR法を用いて定量する。特に平成28年度に子宮内容除去術を行った嚢胞化絨毛患者について、治療中、もしくは経過観察中の患者血漿中microRNAの発現量を定量し、経時的変化を見る。実験方法は平成 28 年度と同様である(長崎大学産婦人科学教室)。5. データ解析:平成28年度と同様である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は検体集積が20例で臨床データ蓄積およびDNA多型解析を行った。そしてすべての症例が全胞状奇胎であったので全胞状奇胎特異的microRNAの発現解析を行った。すべてすでに現有している実験機器及び試薬を用いて実験できたので、使用金額が発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は嚢胞化絨毛組織の中でplacental mesenchymal dysplasiaやplacental site trophoblastic tumorなどの検体と全胞状奇胎あるいは正常絨毛や流産絨毛との鑑別が可能なmicroRNAを同定するため、マイクロアレイ解析あるいは次世代シークエンス解析を行う予定であるため研究申請額の通りに研究費は使用される計画である。
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