研究実績の概要 |
令和元年度は嚢胞化絨毛疾患の血液検体と組織を一組として計4組を集積した。4例すべてに患者、配偶者および組織から抽出したDNAを用いてDNA多型解析を行った。4例のうち1例は病理診断では全胞状 奇胎であったが、DNA診断では部分胞状奇胎と診断された。本研究を通して19例の胞状奇胎を検討し、3例で病理学的診断(免疫染色を含む)と遺伝学的診断が異なっていることが判明し、臨床における正確な診断のために遺伝学的診断を行うことの重要性が確認できた。これらの6例について私どもが以前報告している胞状奇胎 特異的microRNA(hsa-miR-520f, miR-520b, miR-520c-3p)の発現解析を定量的RT-PCR法を用いて行った。いずれの症例も治療経過の推移とともにその発現量は低下した。以上より、嚢胞化絨毛の管理診断には私どもが行っているDNA多型解析ならびに全胞状奇胎特異的microRNAの定量解析が臨床応用可能と期待される。 令和元年度においてもmesencymal dysplasiaやPlacnental site trophoblastic tumorの症例はなく、これらの症例については検討することはできなかったが、今後の検討課題としたい。正確な診断が可能になったことでさらに症例を蓄積し、病理診断、DNA多型解析、microRNAの発現量をデータベース化することで胞状奇胎の分子マーカーの精度を上げ、より簡便な鑑別が可能になることが期待される。
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