研究課題
後方視的に子宮内膜癌患者のパラフィンブロックの組織検体を用いて、POLE変異陽性者の抽出を行う予定である。当初は、腫瘍組織内にリンパ球が少ない群を抽出し、PCRによるdirect sequence法により、抽出する予定であった。しかし、低発生頻度症例検出の効率化のため、一部の計画を変更した。まず、ミスマッチ修復遺伝子に関する抗体(抗MLH-1抗体、抗MSH-2抗体、抗PMS-2抗体、抗MSH-6抗体)を用いた免疫組織化学を行い、少なくとも1種類の蛋白の欠失を認めた症例をスクリーニングすることとした。さらに、これらの症例にサンガーシークエンスを行い、POLE変異陽性者を抽出することとした。免疫組織化学の際に、抗体PMS-2抗体と抗MSH-6抗体の染色の評価が困難であったため、新たな別の抗体を購入し、評価した。これまでに、抗MLH-1抗体、抗MSH-2抗体、抗PMS-2抗体は60症例、抗MSH-6抗体は10症例の染色が終了し、陰性だった症例は、それぞれ7例、2例、3例、0例であった。そのうち、2種類の抗体で陰性であった症例は3例、1種類のみ陰性であった症例は6例であり、計9名の患者がスクリーニングされた。年齢の中央値は、56歳(52-61歳)で、組織型は類内膜腺癌G1が6名、G2は3名であった。9名中8例にがんの家族歴がみられ、3名にリンチ症候群を疑う家族歴がみられた。現在、これらの症例にサンガーシークエンスを行い、POLE変異陽性者を抽出する準備を行っている。
4: 遅れている
平成28年熊本地震の際に、免疫染色後のスライドグラスや実験器具が破損し、研究が一時停止した。以後、過去の子宮内膜癌症例の組織検体に対して、ミスマッチ修復遺伝子に関する抗体(抗MLH-1抗体、抗MSH-2抗体、抗PMS-2抗体、抗MSH-6抗体)を用いて免疫組織化学を行った。現在、サンガーシークエンスの準備をしている。パラフィンから遺伝子を抽出し、PCRで増幅後に、検査会社へ提出後、変異の有無を同定する方法の確立を目指している。
POLE遺伝子の解析が終了すれば、変異陽性群と陰性群の臨床背景を比較する。エストロゲン製剤(妊馬尿由来のエストロゲン)の服用歴、内分泌プロファイルを調べる。腫瘍の組織切片の免疫組織化学により、DNA adduct形成能の比較検討を行う。また、エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体などのホルモン受容体ならびにPTEN、BAF250a、CTNNB1の蛋白発現を調べ、POLEによる変異の中で、子宮内膜癌発癌の鍵となる分子を明らかにする。基礎研究として、POLE/POLD1遺伝子をそれぞれkonckoutしたヒト正常不死化子宮内膜細胞株にカテコールエストロゲンを添加し、非添加群と比較し、軟寒天培地を用いた足場非依存性増殖能を検討する。足場非依存性増殖能を獲得した細胞を用いて、スキッドマウスに移植を行い、造腫瘍能の獲得頻度を検討する。
平成28年熊本地震の際に、免疫染色後のスライドグラスや実験器具が破損し、研究が一時停止したため。又、当初予定していた学会への参加が難しくなったため、次年度使用額が生じた。
POLE遺伝子の解析が終了後、変異陽性群と陰性群の臨床背景を比較する。また、基礎研究として、POLE/POLD1遺伝子をそれぞれkonckoutしたヒト正常不死化子宮内膜細胞株にカテコールエストロゲンを添加し、非添加群と比較し、軟寒天培地を用いた足場非依存性増殖能を検討するための実験用具、試薬などを購入する。また、得られた成果を学会等で発表するための旅費としても使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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