研究課題/領域番号 |
16K11147
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
古山 將康 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00183351)
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研究分担者 |
三杉 卓也 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30761605)
橘 大介 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (50381992)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | fibulin 5 / 骨盤臓器脱 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
本研究はマウス幹細胞を用いた骨盤臓器脱発症に関連する蛋白のリモデリングを解析することである。CRISPR/Cas9システムを用い、骨盤臓器脱の疾患モデルマウスであるfibulin-5ノックアウトマウスを作製することを第一目的として研究を開始した。これまでの報告からfibulin-5 欠損マウスは骨盤臓器脱疾患モデルマウスとなることを確認したが、早期に死亡した。得られた組織(膣壁、子宮、靭帯)における、骨盤臓器脱発症に関連するタンパク質の量やmRNA量について野生型マウスと比較してfibulin-5の生体内での役割を検討した。従来ES細胞を使用する手法ではノックアウトマウスを得るために長い期間を要する。近年、新たな遺伝子改変ツールであるCRISPR-Cas9システムを用い、fibulin-5の配列を含むプラスミドを作製、受精卵へのインジェクション、偽妊娠マウスへの胚移植を行い、fibulin-5ノックアウトマウスを作製できた。安定的なKOマウスの作成の後に、骨盤底支持組織のリモデリングを観察して妊娠、分娩による骨盤底のダメージのメカニズムを解析することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、まずCRISPR Cas9システムを用いたfibulin-5ノックアウトマウスの作成を行った。マウスfibulin-5遺伝子をターゲットとしたガイドRNAを作成し、Cas9タンパク質とともにマウス胚にマイクロインジェクションし、偽妊娠マウスの子宮に移植した。合計29匹のマウスを得た。得られたマウスのDNA配列をシークエンス解析したところ、約50%のマウスで標的遺伝子配列の変異を認めた。このうち、fibulin-5遺伝子が94bpと広範囲にわたって欠損した、ホモ接合体のメスのマウスを選び、野生型マウス(C57BL/6)と交配させた。自然交配、分娩にやや時間を要したが、出産に至り、子マウスを得た。一方、オスはホモ接合体マウスが得られなかったため、片側のfibulin-5遺伝子が71bp欠損したヘテロマウスを同様に野生型マウスと交配させたが、なかなか妊娠に至らなかった。出産したメスのノックアウトマウスは出産後直腸脱を認めたが、数日後に死亡した。このことから、メスのホモ接合体マウスは維持が難しい可能性を考慮し、得られた子マウスのDNA配列の解析を進めていくと同時に、表現型を認めたノックアウトマウスのfibulin-5遺伝子配列をノックインしたマウスを並行して作製することとした。現在は、出産後直腸脱となったマウスのfibulin-5遺伝子配列をCRISPR-Cas9システムを用いて前述のノックインマウスの作成を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在得られているF1のfibulin-5ヘテロマウスを交配、継代していく。今年度の研究では自然交配に時間を要したため、継代に時間がかかるようであれば、オスのホモ接合体マウスが得られた時点で精巣より精子を採取し、PMSG-hCGで過排卵させたメスのマウスから未受精卵を採取、これらを人工授精での繁殖も行おうと考えている。前述のノックインマウスの作成が成功すれば、表現型をすでに確認している遺伝子配列のマウスが複数匹得られると思われるので、こちらも交配、もしくは人工授精にて繁殖を行っていく予定である。また、幹細胞を用いた治療の検討についてはマウスの作成に時間を要したため今年度は行えていない。当初は胚性幹細胞を分化させて間葉系幹細胞を作成し用いる予定であったが、購入可能な間葉系幹細胞がある(骨髄由来正常マウス間葉系幹細胞、GFP導入正常マウス間葉系幹細胞)ため、これを利用し幹細胞治療についての検討を行うことも考慮していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在得られているF1のfibulin-5ヘテロマウスを交配、継代していく。今年度の研究では自然交配に時間を要したため、継代に時間がかかるようであれば、オスのホモ接合体マウスが得られた時点で精巣より精子を採取し、PMSG-hCGで過排卵させたメスのマウスから未受精卵を採取、これらを人工授精での繁殖も行おうと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の研究ではノックアウトマウスの交配に時間を要したため、オスのホモ接合体マウスが得られた時点で精巣より精子を採取し、PMSG-hCGで過排卵させたメスのマウスから未受精卵を採取、これらを人工授精での繁殖も行う予定である。前述のノックインマウスの作成が成功すれば、表現型をすでに確認している遺伝子配列のマウスが複数匹得られると思われるので、こちらも交配、もしくは人工授精にて繁殖を行っていく予定である。また、幹細胞を用いた治療の検討についてはマウスの作成に時間を要したため今年度は行えていない。当初は胚性幹細胞を分化させて間葉系幹細胞を作成し用いる予定であったが、購入可能な間葉系幹細胞がある(骨髄由来正常マウス間葉系幹細胞、GFP導入正常マウス間葉系幹細胞)ため、これを利用し幹細胞治療についての検討を行う。
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