研究課題
卵巣明細胞癌55例から得られた組織検体を用いた。KANK1の遺伝子異常を検討したものの、異常がみられたものはごく少数例にとどまった。KANK1はbeta-cateninと複合体を形成することで、核内でのbeta-cateninの局在を調整しその機能を制御している。そこでbeta-cateninによる制御が示唆されているAurora kinase A(Aurora-A)に着目した。腫瘍組織中のAurora-A蛋白発現は96%の症例でみられ、75%では中等度以上の発現が観察された。基礎的検討では、卵巣明細胞癌由来細胞株6株全てでAurora-A蛋白発現を認めた。明細胞癌株6株のAurora-A阻害剤(ENMD-2076)に対する50%阻害濃度は1.1-2.8 micro mol/Lであった。また、各種抗がん剤(シスプラチン、イリノテカン(SN38)、パクリタキセル、ドキソルビシン)とENMD-2076との併用効果を検討した。6株中シスプラチンとSN38で4株に、ドキソルビシンで3株に相乗効果がみられた。一方、パクリタキセルとの併用では、3株で拮抗作用がみられた。そこで、シスプラチンとENMD-2076との併用による相乗作用の機序を検討した。併用添加により、シスプラチンによるS期細胞比率の増加が抑制されるとともに、アポトーシスが著明に増加した。以上の成績から、難治性卵巣癌の一つである明細胞癌においてAurora-A阻害剤とシスプラチンとの併用療法の有効性が示唆された。
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