【目的】子宮内膜症治療薬である第4世代プロゲスチン製剤のジエノゲストや2型糖尿病薬であるメトホルミンには、子宮内膜癌に対する抗腫瘍効果があると期待されており、新たな子宮内膜癌治療薬の候補である。今回我々は、この2剤の併用による子宮内膜癌細胞に対する抗腫瘍効果の増強やその機序について検討した。 【方法】4種類のヒト子宮内膜癌細胞株に対し、ジエノゲストとメトホルミンをそれぞれ段階的に希釈し作用させ、その時の細胞生存率をMTTアッセイにより測定した。薬剤併用による抗腫瘍効果に寄与する遺伝子を同定するため、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い、2剤併用時にのみ発現が2倍以上変化する遺伝子を同定した。また、子宮内膜癌細胞株におけるEndothelin-2(EDN2)の発現とプロモーター領域のメチル化を、それぞれRT-PCRおよびメチル化特異的PCR(MSP)にて解析した。さらに、皮下腫瘍を形成させたヌードマウスに対しジエノゲストおよびメトホルミンを連日経口投与し、腫瘍径を経時的に測定した。 【結果】ジエノゲスト単剤では子宮内膜癌細胞株に対する細胞生存率の低下は引き起こさなかった。一方、メトホルミン単剤は濃度依存的に細胞生存率の低下を認めた。ともに単剤では効果の認められなかった濃度でも2剤を併用することで細胞生存率の低下を生じることを確認した。マイクロアレイ解析の結果、2剤併用時にのみ発現が変化する遺伝子としてEDN2を同定した。子宮内膜癌細胞株においてEDN2はメチル化により発現が低下しており、ジエノゲストとメトホルミン併用時にEDN2の発現上昇とDNA全体の脱メチル化が認められた。ヌードマウスを用いた検討では、薬剤投与後21日目でジエノゲストとメトホルミン併用群は、コントロール群に比し皮下腫瘍の増殖抑制傾向が認められた(P<0.1)。
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