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2016 年度 実施状況報告書

卵管上皮細胞を起源とする卵巣癌発癌機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K11155
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

赤羽 智子  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (40398699)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード卵巣癌 / 卵管 / 卵管上皮
研究実績の概要

近年の研究より、卵巣癌は卵巣本体より発生する単一の疾患ではなく、腫瘍の組織型によって発癌起源細胞や発癌機序が大きく異なることが解明されている。上皮性卵巣癌の主体である4つの組織型のうち、発生頻度の最も高い高悪性度卵巣漿液性癌(High-grade serouse carcinoma 以下HGSC)の発癌起源細胞は卵巣とは離れた臓器である卵管または卵管采の上皮細胞が由来であることが近年の定説となりつつある。その機序は卵管または卵管采の異型のない上皮細胞に出現する癌抑制遺伝子P53蛋白発現陽性細胞(p53 signature)がSerous Tubal Intraepithelial Carcinoma(以下STIC)と呼ばれる上皮内癌へと移行し、さらに上皮内癌細胞が卵巣表面に付着後、分化増殖しHGSCとなるというものである。これまで申請者の研究においても、HGSC症例の卵管上皮には細胞異型が無いにも関わらず、p53蛋白の強い発現を認めることが確認されている。このような発癌機序を考慮すると、HGSCの早期発見には現在行っているような卵巣本体でおきた二次的変化を自覚症状がでてから検索するのではなく、卵管上皮細胞の遺伝子変化をできうる限り早期に検出することが卵巣癌完治へとつながると考える。卵巣癌は予後が悪いと言われてはいるが進行期分類Ⅰ期で発見可能であった症例の5年生存率は9割を占める。この数値からも早期発見の重要性がうかがえる。
そこで本研究は遺伝性乳癌卵巣癌の原因遺伝子であるBRCA遺伝子変異保持者に多いとされるHGSCの早期発見法の確立からHGSC全体、さらには癌未発症者に対する患者負担が少なく卵巣癌早期発見に有用な新規検査法の確立を目的としている。
卵巣癌は進行期に発見される症例が少なくない。検診対象ではない臓器の癌の早期発見から根治につなげることが癌撲滅に対する一助と考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の研究実施計画はBRCA1または2(以下BRCA1/2)遺伝子変異陽性または変異保持者に多いとされるHGSC例における卵管または卵管采上皮細胞の特性を解析することでHGSCの発癌機序の違いを解明し、さらにはBRCA1/2非保持者におけるHGSC症例の特性と比較解析することでHGSC全体の発癌機序を解明することである。
本年度は当初の計画通りに解析を進行することが可能であった。その理由として、卵巣癌症例約200例のうち、BRCA1/2遺伝子の生殖細胞変異陽性または陰性卵巣癌例を特定することができ、解析対象症例が当初の計画症例より追加可能であったこと、さらに200症例中、HGSC症例における手術検体を対象に卵管上皮細胞と腫瘍部の各部位の細胞についてTP53遺伝子解析を行い、各部位に高頻度に検出される遺伝子変異の部位の特定を進められ卵管上皮細胞からの発癌機構の違いを解明することができている状況であることがあげられる。この解析は当初の計画通りであり、順調に研究が遂行できていると評価できる。

今後の研究の推進方策

卵巣癌早期発見のための簡便な検査システムの開発から、さらに遺伝性乳癌卵巣癌の原因遺伝子であるBRCA1/2遺伝子変異保持者であり、癌未発症者に対するサーベランス法の開発にもつなげることが本研究の通年の目的である。
そのため、現在行っている卵巣癌患者を対象とした卵管上皮細胞の遺伝子変異の基礎データーを蓄積することが現在最優先すべき必要な実施課題である。今後は現在行っているデーターの蓄積から高感度PCRを使用した微量細胞からの遺伝子変異検出法を実施し本研究課題より実臨床応用可能な検査法を確立する。

次年度使用額が生じた理由

ダイレクトシークエンス解析に使用するsequencer使用料金は1本あたりで使用すると単価が高くなる。そのため96wellplateを使用しまとめて解析することで単価を下げて解析した。この方法により機器使用料が節約できたことで次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

前年度の差額は、遺伝子配列解析のための比較的単価の高い蛍光試薬に試薬代として該当させるほか、本年度は論文作成予定であるため投稿料や英文校正料の一部としても充当させる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] UGT1A1 polymorphism as a prognostic indicator of stage I ovarian clear cell carcinoma patients treated with irinotecan.2017

    • 著者名/発表者名
      Yoshihama T, Hirasawa A, Nomura H, Akahane T, Nanki Y, Yamagami W, Kataoka F, Tominaga E, Susumu N, Mushiroda T, Aoki D
    • 雑誌名

      Jpn J Clin Oncol.

      巻: Feb 4;47(2): ページ: 170-174

    • DOI

      10.1093/jjco/hyw163.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Clinical utility of a self-administered questionnaire for assessment of hereditary gynecologic cancer.2017

    • 著者名/発表者名
      Masuda K, Hirasawa A, Irie-Kunitomi H, Akahane T, Ueki A, Kobayashi Y, Yamagami W, Nomura H, Kataoka F, Tominaga E, Banno K, Susumu N, Aoki D.
    • 雑誌名

      Jpn J Clin Oncol.

      巻: Mar 13:1. ページ: Epub

    • DOI

      10.1093/jjco/hyx037.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 血縁腫瘍歴聴取票を用いた婦人科関連遺伝性腫瘍のスクリーニングに関する検討.2016

    • 著者名/発表者名
      平野卓朗,平沢 晃,真壁 健, 坂井健良, 赤羽智子,増田健太,小林佑介, 山上 亘,野村弘行,片岡史夫,冨永英一郎, 阪埜浩司,進 伸幸,青木大輔.
    • 学会等名
      第2回日本産科婦人科遺伝診療学会学術講演会
    • 発表場所
      京都府京都市メルパルク京都
    • 年月日
      2016-12-16 – 2016-12-17
  • [学会発表] 腹水細胞中から樹立したヒト悪性腹膜中皮腫由来細胞株の特性に関する検討.2016

    • 著者名/発表者名
      赤羽智子, 冨永英一郎, 平沢 晃, 青木大輔.
    • 学会等名
      第55回日本臨床細胞学会秋期大会
    • 発表場所
      大分県別府市別府国際コンベンショナルセンター
    • 年月日
      2016-11-18 – 2016-11-19
  • [学会発表] 自己記入式がん家族歴聴取票を使用した遺伝高リスク家系の抽出.2016

    • 著者名/発表者名
      國富晴子, 増田健太, 平沢 晃, 赤羽智子, 小林佑介, 山上 亘, 野村弘行, 片岡史夫, 冨永英一郎, 阪埜浩司, 進 伸幸, 青木大輔.
    • 学会等名
      第22回日本家族性腫瘍学会学術集会
    • 発表場所
      愛知県松山市ひめぎんホール
    • 年月日
      2016-06-03 – 2016-06-04
  • [学会発表] TAS-117, a novel allosteric AKT inhibitor, shows potent antitumor activity on ovarian clear cell adenocarcinoma cells from fresh surgical samples in 3-dimentional culture.2016

    • 著者名/発表者名
      Tsuta K, Tominaga E, Tozawa A, Akahane T, Uekawa A, Ohara T, Nomura H, Kataoka F, Hirasawa A, Bonno K, Suzuki N, Aoki D.
    • 学会等名
      第68回日本産科婦人科学会学術講演会
    • 発表場所
      東京都 東京国際フォーラム
    • 年月日
      2016-04-22 – 2016-04-24

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公開日: 2018-01-16  

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