研究課題
卵巣癌は婦人科腫瘍の中で最も予後不良である。2015年の国立がんセンターの報告によると本邦では年間8400人が罹患し、4800人が死亡したとされていることから、現状では卵巣癌罹患者は約半数は死亡するということになる。しかしながら、卵巣癌に罹患者において、腫瘍が骨盤内に限局したⅠ期の状態で対処可能であった症例の5年生存率は約9割に達している。このような現状より、卵巣癌におけるがん死亡者数を減少させるには早期発見がいかに重要であるかは言うまでもない。しかし、卵巣は検診対象臓器ではなく、表層臓器ではないうえ、卵巣癌発症者の初期症状はほぼ無症状であることから、卵巣癌の早期発見は困難とされている。したがって卵巣癌死亡者数を減少させるには、他の臓器における検診に匹敵するような簡便で安価な新規検査方法の開発が必要である。そこで本研究は卵巣癌の発癌メカニズムの解明から、解析結果を卵巣癌早期発見のための検査法の開発へとつなげることを目的としている。近年の研究より、卵巣癌の9割を占める上皮性腫瘍は卵巣本体より発生するのではなく組織型別に発癌起源が異なることが解明されつつある。なかでも最も発症頻度の高い漿液性癌は卵管上皮の前癌病変状態にあるp53過剰発現細胞(p53signature)がserous tubal intraepithelial carcinoma(STIC)と呼ばれる細胞へと変化し、STIC細胞が卵巣へ移植されることで卵巣に発癌するとされている。そこで本年度は卵管上皮細胞のp53signature細胞を単離し、単離細胞に検出される遺伝子変異をサンガー法および微量変異検出法にて解析し、卵管上皮で起こった遺伝子変異を卵管以外の場所で検出することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
卵管上皮で起こった遺伝子変異のイベントを微量に検出する方法および卵管以外の場所から採取された細胞での成功例は現在までに報告されていない。したがって研究は順調に遂行されていると考える。
卵巣癌早期発見を目的とした簡便で安価な方法を開発し、卵巣癌患者はもちろんのこと、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の原因遺伝子であるBRCA1/2遺伝子変異保持者の癌発症前のサーベーランスにより、癌早期発見につなげるスクリーニング検査法として確立することを今後の研究推進方策とする。
遺伝子解析を単数で行うのではなく、plate単位でまとめて機器の稼働をさせたため、機器使用料が節約できた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件)
Oncotarget
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