研究課題/領域番号 |
16K11158
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
大城 久 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60381513)
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研究分担者 |
黒田 雅彦 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (80251304)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 横隔膜 / 液状化細胞診 / 腹膜擦過細胞診 / セルブロック / diaphragm / liquid-based cytology / cell block / exfoliative cytology |
研究実績の概要 |
本年度は横隔腹膜擦過細胞診を行う際,採取器具の違いが細胞採取量等にどのような影響を与えるかについて検討した. 対象は非担癌で明らかな腹膜炎のない剖検例8例と担癌の剖検例1例とした.非担癌の剖検例8例を,年齢や性,死後時間,腹水量に偏りなくランダムに2群に分け,従来法である綿棒(成毛式ソラココットン 大4 K70-7105)を採取器具に使用した群(A群, n=4)と,新規法であるブラシ(Orcellex Brush)を採取器具に使用した群(B群, n=4)とで比較した.担癌の剖検例はブラシで採取した.剖検時,腹水を吸引した後,横隔腹膜を擦過し,検体を液状化細胞診検体試薬ボトル(TACAS Gyn Vial)にて回収し,用手法プロトコール(MBL)に従って細胞診標本を作製した.各ボトルからパパニコロウ染色,PAS染色,アルシアンブルー染色,ギムザ染色標本を1枚ずつ作製した後,ボトルの残渣検体からアルギン酸ナトリウム法によるセルブロック標本ならびにH&E染色標本を作製した.各染色の観察にはバーチャルスライドシステムを使用した.有核細胞数の計測にはパパニコロウ染色標本を用いた. いずれの症例でも採取後に横隔膜損傷や不正出血は起こらず,4種類の細胞診染色標本は問題なく作製でき,観察可能な標本の質が担保されていた.A群(中央値10万個)よりもB群(中央値48万個)の方が細胞採取量が有意に多かった(P<0.05).また,セルブロックH&E染色標本中にはA群では有核細胞が含まれていない症例があったが,B群では全ての症例で有核細胞が認められた.担癌症例では全ての標本で癌細胞が観察され,組織標本で癌の横隔腹膜転移が確認された. 本研究結果は,ブラシを用いた横隔腹膜擦過ならびに液状化細胞診断法が綿棒を用いた従来法と比べて細胞採取量を増加させ,癌細胞の検出の精度を向上させる可能性を示唆するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
擦過細胞診の採取器具の違いが細胞採取量に与える影響を明らかにすることができた.本方法のブラシを用いた横隔腹膜擦過ならびに液状化細胞診断法は綿棒を用いた従来法と比べて操作が簡便であり細胞採取量が多く,また,セルブロック標本の作製にも優れているため,卵巣癌の横隔腹膜転移の有無を術中に調べる有用な検査法の一つになりうると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は本方法のブラシを用いた横隔腹膜擦過ならびに液状化細胞診断法を卵巣癌の術中に施行し,得られた検査結果を用いて,卵巣癌の横隔腹膜転移の病態とその予測因子,臨床的意義を解明していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度内の物品の購入が研究当初の予定よりも少なかったことや,投稿し受理された論文の雑誌掲載費用やカラー印刷代等の請求が本年度内にこなかったこと等が主な理由と考えられる.
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次年度使用額の使用計画 |
必要な物品・消耗品の購入費,および研究協力者への謝金等として研究費を使用する.また,研究成果の学会発表や論文の執筆から出版までの過程でかかる諸費用として研究費を使用する.
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