研究課題
本研究は,卵巣の漿液性癌及び明細胞癌を対象とした癌関連microRNA (miRNA)の網羅的発現解析を基盤として,卵巣癌の早期診断・予後予測・分子治療を目指すことを目的としている.先行研究では,癌関連miRNAの網羅的発現解析により,卵巣癌の2つの組織型において有意に発現の異なる5つの miRNAを同定した.まず明細胞癌において有意に高発現であったmiR-9に着目し検討を行った.miR-9高発現の卵巣明細胞癌株を用いてmiR-9発現制御による細胞効果を調べたところ,miR-9は細胞接着因子の1つであるEcadherinをターゲットとし,上皮間葉転換に関与していることが明らかとなった.このことより卵巣明細胞癌の特性の1つとしてmiR-9の高発現が関与していることが示唆され,miR-9抑制が新たな治療戦略の候補と考えられた.次に漿液性癌において有意に低発現であったmiR-34aに着目し,in vitro及びin vivoでの検討を行った.miR-34a低発現の卵巣漿液性癌株を用いてmiR-34a安定発現株を樹立し細胞効果を調べたところ,miR-34aは,IL-6R/STAT3シグナル伝達経路を含む様々なターゲットを介して細胞増殖・細胞浸潤・抗がん剤感受性等に変化を認めた.またヌードマウスの皮下移植実験では,miR-34aの強制発現により腫瘍原性抑制効果を示すことも明らかとなった.以上より,miR-34aを用いた新たな治療戦略の可能性が示唆された.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Clinical Cancer Research
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10.1158/1078-0432.CCR-18-3378