研究課題/領域番号 |
16K11161
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
中嶋 亘 日本医科大学, 医学部, 講師 (40557500)
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研究分担者 |
田中 信之 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (80222115)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アポトーシス |
研究実績の概要 |
本研究は、外科療法が困難なトリプルネガティブ乳がんに対して、化学療法薬の感受性を決定付ける因子の探索を目的としている。これまでに我々は、アポトーシス抑制遺伝子Mcl-1に着目し、その分解機構を報告してきた。化学療法薬タキサン系薬剤パクリタキセル、アンスラサイクリン系薬剤ドキソルビシンや白金製剤シスプラチンを処理した際に起きるアポトーシス誘導機構の分子生物学的解析を細胞株で行った結果、どの薬剤も処理後にMcl-1が分解されることでアポトーシス誘導効果が高まることが明らかとなっている。 しかしながら、白金製剤シスプラチンとタキサン系薬剤パクリタキセルとでは、Mcl-1の分解に必要な因子がそれぞれ異なっており、また培養細胞株を用いた解析において、薬剤抵抗性細胞株ではMcl-1の分解が抑制されていることが観察された。したがって、Mcl-1の分解がより促進される化学療法薬を選択できるようになれば、より効果が期待できる化学療法薬を客観的な判断に基づいて選択することが可能である。我々は、Mcl-1を中心とした分解機構を分子生物学的な解析を行うことによって、シスプラチン特異的にMcl-1の分解を促進する分解酵素を同定した。さらには、この分解酵素は修飾されたMcl-1を特異的に認識して分解することが明らかとなった。また、シスプラチンに感受性の高い培養細胞ではMcl-1の修飾が亢進しており、逆に抵抗性細胞株ではMcl-1の修飾がほとんど観察されなかったことから、現在、我々はMcl-1の修飾を促す分子機構を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、我々はこれまでの報告とは別に、シスプラチンによってアポトーシス抑制遺伝子Mcl-1の分解を促進する分解酵素を同定することができた。さらにはこの分解酵素は特異的な修飾を受けたMcl-1のみを認識して分解することが明らかとなった。この修飾を受けているMcl-1の発現レベルが高い細胞株と低い細胞株とでは、シスプラチンによる感受性に差があることが観察されたことから、修飾を促進する酵素を各阻害剤を用いて現在探索中であるが、初年度の計画通り遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでに得られた結果から、個体間でのMcl-1の分解酵素の発現レベルの差異、またはMcl-1を修飾する酵素活性の強さがMcl-1の発現レベルを制御し、最終的にはシスプラチンによる感受性を制御しているのではないかと仮説をたてており、まずは培養細胞においてこの分解酵素を強発現する細胞株やRNA干渉法により発現抑制した細胞株を作成して解析を行っている。また、最終的には患者組織検体から分解酵素または探索中である修飾酵素の同定後、その活性型修飾酵素を認識する抗体を用いて組織染色を行い比較検討することで、シスプラチンによる感受性を予測する効果予測因子になりえるかどうかその可能性を含めて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に従い、解析に必要な試薬の購入を行うため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画とは異なる因子の存在が予測されるため、次年度はその因子の探索に用いるための試薬、組織検体を解析するために必要な抗体の購入、また学会発表行うための経費を計画している。
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