研究実績の概要 |
子宮頸癌由来 CaSki 細胞(PIK3CA及びsonic hedgehog 遺伝子変異)の増殖抑制効果はAkt、Hedgehog、Wnt/β-cateninの複数のシグナル伝達系の抑制を介していることを確認した後(Ueda, Tsubamoto, Anticancer Res. 2017)、子宮体癌由来 HEC-1A及びAN3-CA細胞ではAKT/mTORを介した増殖抑制であることを明らかにして報告した(Tsubamoto, Anticancer Res. 2017)。次に、体癌細胞株を用いた基礎検討で、イトラコナゾールにより細胞内脂質輸送障害が生じること、細胞膜 lipid raft の抽出により細胞膜上のRTKが変動することを確認した(Unpublished)。臨床研究は、2015年よりイトラコナゾールを主治療開始前の短期間(window period)内服投与しバイオマーカーや作用機序を探索するwindow of opportunity試験(UMIN000018388)を実施し、2019/4~特定臨床研究 jRCTs051190006 へ移行した。2019年3月までにイトラコナゾールが投与された癌患者12例中6例において投与1週間後に性器出血が減少し、内診による視診あるいは経腟超音波検査などの画像所見で腫瘍縮小を認めた。稀症例である腟悪性黒色腫については組織mRNAマイクロアレイ解析により新規治療ターゲット候補4分子を報告した(Inoue, BMC Cancer, 2018)。また、conversion surgery を目的とした化学療法のP2試験(UMIN000021340)を2019年ASCOで報告する予定である(abstract 4026)。イトラコナゾールのヒトにおける有効性と分子生物学的な作用機序を検討し、バイオマーカ―と新規標的分子を探索するトランスレーショナルリサーチは日欧米で検索する限り他施設で実施されておらず、イトラコナゾールを用いたドラッグ・リポジショニングによるがん治療薬開発に関して先駆的な研究である。
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