研究課題
デルタ型グルタミン酸受容体は内耳を含めて神経系に広く発現している。近年、デルタ型受容体は強力なsynaptic organizerであり、シナプス可塑性にも関与することがわかり、グルタミン酸受容体の新しい機能として注目されている。さらにデルタ型受容体の異常によるsynaptopathyが多くの神経変性疾患と関連付けられている。研究代表者はこれまでの研究で、デルタ型受容体のGluD1とGluD2が蝸牛・前庭に発現していて代償関係にあること、その異常が外有毛細胞遠心性シナプスの変性による進行性の高音障害型難聴を引き起こす可能性を明らかにした。本年度はデルタ受容体の内耳における機能および局在に関する解析を行った。デルタ受容体タイプ1(GluD1)欠損マウス(GluD1 KO)の聴覚機能については、ABRとDPOAEを用いて、それぞれ内有毛細胞と外有毛細胞の機能解析を行った。その結果、生後5ヵ月より高音域の閾値上昇とDPレベルの低下が現れ、その後、徐々に低音域まで難聴が進行した。このことから難聴の機序として主に外有毛細胞の機能不全が考えられた。そこで、有毛細胞の遠心性シナプスマーカーであるsynaptophysinを用いて、外有毛細胞のシナプス数の変化を経時的、周波数別に観察をすることとした。脱灰標本で蝸牛全長を保存し、DAB染色で可視光で観察を行った。現在、その技術はほぼ確立し、生後9ヵ月までのマウスで定量を行っている。本研究は他領域との横断的な研究を進めることで、内耳におけるデルタ型受容体のsynaptic organizerとしての機能を明らかにしようというものである(図1)。そして外有毛細胞synaptopathyという新しい疾患概念を構築し、内耳障害の治療の新しいアプローチを開発することを目標にする。
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Otology Japan
巻: 30 ページ: 122-126
巻: 29 ページ: 45~51
10.11289/otoljpn.29.45