研究課題
常染色体優性の非症候群性中耳奇形家系を対象とした全エクソーム解析を行いHOXA2に重複変異を同定した。中耳奇形あるいは小耳症を有する19例を対象にHOXA2のスクリーニングを施行したが変異は同定されなかった。従って、HOXA2変異は遺伝学的知見に基づく中耳奇形の1つの分類項目となるものの、比較的まれと考えられた。一方、非症候群性常染色体劣性遺伝形式の中耳奇形を示す3世代の日本人家系に遺伝子解析を行った。9例の家族構成員(うち2例の姉妹が中耳奇形)よりDNA採取と純音聴力検査を施行した。中耳奇形の2姉妹は両側の中耳手術が施行され、全耳がキヌタ骨長脚欠損とアブミ骨低形成を示していた。中耳奇形の2姉妹、妹、両親を対象に次世代シークエンサー(Ion Protonシステム)による全エクソーム解析を行った。アノテーション、フィルタリングにて原因候補遺伝子を探索したが、セグリゲーションが得られるような候補遺伝子は同定できなかった。フィルタリングにて除外した上・下流領域、ncRNA領域、非翻訳領域や今回解析の対象外となったイントロン領域に原因となるバリアントが存在する可能性が示唆された。三世代の優性遺伝のauditory neuropathy spectrum disorder(以下、ANSD)家系(難聴者3例、非難聴者1例)に全エクソーム解析を行った。アノテーション、フィルタリングを行い、39の原因となる候補バリアントを同定した。この中には、機能上シナプトパシーとしてANSDを起こしうる遺伝子Xの終止バリアントが含まれていた。一方、同じバリアントは、全エクソーム解析を行った別の優性遺伝家系にも同定された。しかし、京都大学の日本人大規模コントロールデータ(HGVD)における同バリアントのアリル頻度は0.006であり、原因として確定には至らなかった。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り全エクソーム解析を行い候補遺伝子変異を同定することができており、次年度以降も順調に推移すると考えられる。
本年度遺伝子解析を行った非症候群性常染色体劣性遺伝形式の中耳奇形を示す3世代の日本人家系に関しては、全ゲノム解析を行い原因となるバリアントを同定することも1つの方法である。しかし、家系が小さく原因バリアントが同定されない可能性が高い。一方、キヌタ骨長脚欠損とアブミ骨低形成は、頻度の高い中耳奇形である。同様の奇形を示す孤発例、劣性遺伝家系を収集し、多数の家系から原因遺伝子の同定を行なっていく。SIX1は、中耳奇形を合併しうる鰓弓耳(BO)症候群の原因遺伝子である。研究代表者らは、病的なミスセンスバリアント(c.386A>G)を2家系に同定し学術論文に報告している。今回、信州大学耳鼻咽喉科通院中のBO症候群において3家系目のc.386A.Gが同定された。これらの3家系に対してハプロタイプ解析を行い、本変異がホットスポット変異か創始者変異かを明らかにする。優性遺伝のANSD家系に関しては39の候補バリアントが同定された。この中で、in silico解析結果などからより病原性が高いと考えられる23バリアント(23遺伝子)を選定した。現在、信州大学のDNAバンクには、別の優性遺伝のANSDの1家系が含まれている。この家系の難聴者、非難聴者に対して、直接シークエンス法により23遺伝子をスクリーニングする。病的なバリアントが同定されれば、当該遺伝子に対して近交系マウスの膜迷路から抽出されたmRNAの解析、内耳の免疫組織学的解析により蝸牛内の存在および局在を検討する。
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