本年度は前年度までに実施した、常染色体優性の非症候群性中耳奇形家系を対象としたエクソーム解析の結果の再解析としてIonAmpliSeq ExomeとIonProtonシステムを用いた解析を、家系内サンプルを増やして解析した、illuminaプラットフォームで実施したのと同様に、HOXA2の重複変異が候補として可能性が高いことを明らかにした。加えて、本家系とは別に中耳奇形・小耳症を有する1症例を対象にHOXA2 遺伝子のサンガーシークエンス解析を実施したが、病的変異は同定されなかった。現在、以上の結果を取りまとめて論文として報告するための準備を行なっている。 また、非症候群性常染色体劣性遺伝形式の中耳奇形を示す日本人家系にエキソーム解析を行ったが、アノテーション、フィルタリング後に疾患とセグリゲーションが得られるような候補遺伝子は同定できなかった。フィルタリングにて除外した上・下流領域、ncRNA領域、非翻訳領域や今回解 析の対象外となったイントロン領域に原因となるバリアントが存在する可能性が考えられたため、これらの領域の変異を対象に加えた解析を実施したものの、現時点までに候補となる変異は認められなかった。 また、優性遺伝形式をとるauditory neuropathy spectrum disorder(以下、ANSD)家系に関しても同様に全エクソーム解析を行った。その結果、約40種類まで候補バリアントを絞り込むことに成功した。この中には、機能上シナプトパシーとしてANSDを起こしうる遺伝子を同定したが、新規遺伝子であるため、動物実験等による確認が必要な状況である。
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