研究課題
【背景】先天性難聴は1/1,000の割合で生まれる最も多い先天性障害である。人工内耳植込術は聴覚獲得の有効な手段であるが、ラセン神経節細胞が保たれていなければ有効性が低い。一方、分子Gは神経成長・遊走因子として、近年、世界的に注目されているアクチン結合分子である。【目的】本研究は、分子Gが先天性難聴を誘発する機構を動物で解明し、先天性難聴の予知・予防・治療の開発に結びつける。【結果】昨年度の聴性脳幹反応(ABR)測定より、分子G欠損ホモマウスは4, 20, 32 kHzのABR閾値が野生型と比較して40-50 dBの差を示す結果が得られている。今年度では、分子G欠損ホモマウスの出生率が大変低かった為、ヘテロマウスを用いて実験を行った。10週齢のヘテロマウスの歪成分耳音響放射(DPOAE)測定を実施した所、野生型マウスと比較して、ヘテロマウスの高音域(22 kHzと32 kHz)のDPOAE amplitudeは有意に低下する事が分かった。一方、生後3週齢の分子G欠損ヘテロマウスのABR測定も実施したが、野生型マウスと比較して有意な差は示さなかった。【今後の検討課題】過去の報告でチロシンキナーゼ型の神経成長因子の受容体c-Retの重度の機能低下マウス(ホモノックインマウス)は先天性難聴を、軽度低下マウス(ヘテロノックインマウス)は加齢性難聴の表現型を呈する事が示されている。分子G欠損マウスもホモマウスとヘテロマウスで同様の表現型を呈する可能性がある。今後は、分子G欠損ヘテロマウスの例数を増やし、ABRとDPOAEを経時的に測定すると共に、内耳のコルチ器の形態解析を実施し、本仮説の検証を進める予定である。
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