研究課題/領域番号 |
16K11180
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
喜多 知子 (嶋知子) 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定助教 (20362519)
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研究分担者 |
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 講師 (50335270)
山田 勇磨 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (60451431)
山口 太郎 摂南大学, 薬学部, 助教 (30710701)
北尻 真一郎 信州大学, 医学部, 特任講師 (00532970)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内耳 / ドラッグデリバリー / ナノキャリア |
研究実績の概要 |
本研究は、耳科学と薬剤学との融合研究であり、効率的な内耳への薬物送達を達成するための新知見を創出することを目的とする。今年度は以下の項目につき検討を進めた。
1)血液内耳関門の初代培養株の樹立:昨年度の予備検討の継続及び発展を目指したが、長期培養に耐えうる細胞が得られなかった。そこで細胞単離条件の再検討を行ったところ、(Papain、Collagenase IV、Dispase、Accutase、TrypLE等)の検討では最適なものが見つからず、「単離できない、または死細胞ばかり」という結果となった。 2)血液内耳関門に関わる輸送体のキャラクタリゼーション:1)の条件で、成獣マウス内耳蝸牛からの血管内皮細胞単離採取を試みたが、得られた単離細胞のうち、CD31抗体でちゃんと染まる(=セルソート可能な)元気な細胞が非常に少なかった。よって、血管内皮細胞が光る変異マウス(Flk1-GFPFlt1-tdsRed BACTgマウス)を入手し、新たな検討を行った。横河電機が開発中のシングルセルピック装置の利用である。各々の器官培養サンプルを会社に持ち込み、光る細胞のセルピックを試みた結果、成功率は低いものの可能であることを確認した。 3)In vivo動物実験:様々な化合物(約50化合物)を全身投与することにより、内耳への移行率を脳・全身血と比較し、検討した。その結果、大半は内耳が低い濃度であったが、一部の化合物において内耳で高い濃度を示すものがあった。 4)ナノキャリアの細胞移行実験:内耳細胞への遺伝子導入を目的として遺伝子発現プラスミド封入ナノスフェアの検討を行った。蛍光色素ラベルのナノスフェアは常時調製可能であるが、3)の成果をもとに輸送体に認識される分子を封入したナノスフェアの開発を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「血液内耳関門の初代培養株の樹立および薬剤透過性実験、不死化マウスによる細胞株の樹立」について、様々な細胞単離条件を検討したが最適なものが見つからず、初代培養系の実験は諦めることになった。その他の項目「in vivo実験ならびにキャラクタリゼーション」についてはおおむね順調に進展しており、残り1年を加速して進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「血液内耳関門の初代培養株の樹立および薬剤透過性実験、不死化マウスによる細胞株の樹立」について、様々な細胞単離条件を検討したが最適なものが見つからず、初代培養系の実験は諦めることになった。最終年度は「in vivo実験ならびにキャラクタリゼーション」について加速して進める予定である。 1)血液内耳関門に関わる輸送体のキャラクタリゼーション:血管内皮細胞が光るマウス内耳サンプルを用いてA)横河電機の生細胞からのシングルセルピック装置、B)Leicaのレーザーマイクロダイゼクション、を用いた検討を進める。前者は、1層になった培養細胞株のセルピック用に開発されたものであるため、立体的な内耳器官でのジャンクションに富んだ血管内皮細胞のセルピックに応用するには幾つかの改善点が必要と考えている。一方、後者は採取サンプルからのRNAの収率に問題があることから、脱灰も含め早急に検討を行う。 2)In vivo動物実験:今回の検討で内耳への移行性が認められた化合物について、それらの類似体を用い、さらに検討を進める。 3)2)の成果をもとに内耳特異的な輸送体に認識される分子を封入した蛍光ラベルナノスフェアの開発を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度から使用を開始した「血管内皮細胞が光る変異マウス(Flk1-GFPF1t1-tdsRed BACTgマウス)」の産仔がなかなか得られず、培養実験が中心になったため、使用額が当初に比べ少なくて済ませることができた。また得られた実験結果を通して、次年度の使用計画が定まった(レーザーマイクロダイゼクションおよびマイクロアレイ解析)ことから、本年度分を次年度にあてるようにした。
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