研究課題/領域番号 |
16K11183
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
武田 憲昭 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (30206982)
|
研究分担者 |
坂田 ひろみ 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50294666)
北村 嘉章 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 講師 (60380028)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 前庭代償 / 脱代償 / Fos / 前庭神経核 / 促進薬 |
研究実績の概要 |
まずWistar系雄ラット(約150g)を用い、右耳の内耳破壊は麻酔下に卵円窓から100%エタノールを注入して行った。ラットの右)内耳破壊後に、経時的(内耳破壊後1~21日)にMK801(1.0 mg/kg, i.p.)を投与して脱代償を誘発した。2時間後にラットを灌流固定し、脳幹を取り出し、免疫組織化学法によりFosを染色した。左)内側前庭神経核のFos陽性ニューロンを、Image Jを用いて定量した。ところが、以前の研究(Kitahara, Takeda, et al.: Brain Res 700: 182-190, 1995)と異なり、左)内側前庭神経核のFos陽性ニューロンが十分に出現しなかった。そこで、新しいロットの抗Fos抗体に変更し、2次抗体と免疫染色の反応時間などの条件を見直した。さらに、右)内耳破壊後6時間で右)内側前庭神経核にFos陽性ニューロンが出現することから、十分に破壊されていると考えていたが、再検討した結果、MK801による脱代償により左)内側前庭神経核にFos陽性ニューロンが出現するためには内耳の完全破壊が必要であることが判明した。そこで、卵円窓からの100%エタノールの注入を1回から3回とし、卵円窓からピックで機械的にも内耳を破壊するようにした。その結果、右)内耳破壊後のMK801の投与により、左)内側前庭神経核にFos陽性ニューロンが安定して出現するようになった。 そこで改めて経時的にMK801を投与して脱代償を誘発し、左)内側前庭神経核のFos陽性ニューロンを測定したところ、内耳破壊3日後でピークとなり、10日後に消失することが明らかになった。すなわち、前庭代償の初期過程の完成は3日後、後期過程の完成は10日後であることが明らかになった。このことから、本研究の特色である前庭代償の新しい評価法を用いることができると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットの右)内耳破壊後に、MK801(1.0 mg/kg, i.p.)を投与して脱代償を誘発すると、左)内側前庭神経核のFos陽性ニューロンが出現することを以前の研究(Kitahara, Takeda, et al.: Brain Res 700: 182-190, 1995)で報告していたが、本研究で同じ条件で実験を行っても再現できなかったため。 しかし、実験条件を見直すことでFos陽性ニューロンが出現するようになり、本研究の特色である前庭代償の新しい評価法を用いることができるようになった。
|
今後の研究の推進方策 |
実験条件を見直すことで当初の計画よりやや遅れているが、前庭代償の初期過程の完成は3日後、後期過程の完成は10日後であることが明らかになり、本研究の特色である前庭代償の新しい評価法を用いることができると考えられた。前庭代償の後期過程を促進する可能性のある薬物としてthioperamideを使用する予定だが、前庭代償の後期過程の完成が当初の予定より早期であることがわかったため、浸透圧ポンプではなく、連日の腹腔内投与を用いる予定である。前庭代償の初期過程の完成は3日であるが、右)内耳破壊の4時間後までに、MK801で脱代償を行わなくても一時的に左)内側前庭神経核にFos陽性ニューロンが出現することが分り、前庭代償の初期過程の促進の評価に干渉する恐れがある。しかし、右)内耳破壊だけで出現するFos陽性ニューロンの分布と、MK801で脱代償を行って出現するFos陽性ニューロンの分布とが異なっている可能性があり、さらに詳しく検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験条件を見直すことで当初の計画よりやや遅れたため、前庭代償を促進する可能性のある薬物としてthioperamideなどの試薬を使用する予定だったが、その購入が遅れたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に試薬を購入して使用する。
|