姿勢制御における視覚依存性と体性感覚依存性の重み付けを変化させ、視覚外乱を与えても姿勢を崩しにくくする姿勢制御を獲得するために、新しい平衡訓練器と平衡訓練方法の開発をおこなった。最終年度は、6ヶ月以上平衡障害を訴える難治性の一側性前庭機能障害患者を対象に我々が作成した新しい平衡訓練器を用いて平衡訓練を行い検討した。新しい平衡訓練器は、頭部の傾斜情報を下顎部に振動としてフィードバックできる機能を有する機械である。患者には3ヶ月間、平衡訓練器を装着したままで、顔を傾ける、立つ、座る、歩くなどの指定されたタスクを自宅で15分以上1日2回、毎日行ってもらった。効果判定には、日常生活におけるめまいの支障度をアンケートでスコア化できるDizziness Handicap Inventory(DHI)、日常動作における平衡機能をスコア化したFunctional Balance Scale(FBS)、静的姿勢制御を評価する重心動揺検査、姿勢制御における視覚依存性と体性感覚依存性を評価できるラバー負荷重心動揺検査を用いた。一側性前庭機能低下患者に対して平衡訓練器を用いた平衡訓練を3ヶ月行うことによって、DHIおよびFBSの改善を認めた。姿勢制御の視覚依存性の指標であるラバー・ロンベルグ率と姿勢制御の体性感覚依存性の指標である閉眼ラバー比が低下傾向を認めた。慢性期の誘発性めまいを訴える一側性末梢前庭機能障害患者の姿勢性制御は視覚依存性になっていることから、平衡訓練器を用いた新しい平衡訓練は姿勢制御の視覚依存性を変化させ、めまいの自覚症状や姿勢制御を改善する可能性があると考えられた。
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